診療報酬約82万円をだまし取ったとして、沖縄市の産婦人科医院「あいレディースクリニック」院長(52)が詐欺容疑で逮捕された。「事実なら許せない」「私たちの健康はどうなるのか」-。入院していた元患者の間で怒りの声が広がっている。

院長が詐欺容疑で逮捕されたあいレディースクリニック=20日、沖縄市美里

■拭えない不信感

 沖縄本島中部の50代の夫婦の子どもは6年前、同院で帝王切開で生まれたが、脳の障がいがあり、ベッドの上で人工呼吸器が必要な状態だ。退院4日後にミルクを飲まなくなり、血中に入った菌が脳まで達した「敗血性ショック」と別の病院で診断された。専門医療を受けるため転院すると、同院で産まれた別の子が搬送されてきた。

 病院の対応と障がいの関連は明確になっていないが、不信感は拭えない。「詐欺容疑で逮捕されたが、医療行為の面で悔しい思いをしている人も多いはず。全てを明らかにしてほしい」と声を振り絞った。

 今年2~5月、計4週間ほど入院したという本島中部在住の30代女性は、入院費計約40万円の請求と診断内容に不信感を抱いて転院した。

 子宮口を縛る手術は十分な事前説明がないと感じた。「院長に『赤ちゃんが危ないから』と言われたら何でも従うしかない。本当に必要な医療行為だったのか」と疑問を抱く。

■薬の量に感じた疑問

 20代の女性も昨年、切迫早産の診断を受け、急きょ入院が決まった。次々に投与される薬の量に疑問を感じた。

 入院から数日後、退院したいと院長に伝えると、「医療のプロが言うことをなぜ信用できないのか」「こっちは一番高くていい薬を渡しているのに」などと言われたという。「患者の命や健康を軽視していたのか。他の病院では二度とこんなことは起きてほしくない」と唇を震わせた。

 21日午後7時ごろ。あいレディースクリニック出入り口には「23日まで外来診療は休診します」と書いた紙が貼られていた。男性スタッフは「この先のことは本当に分からなくて、何も言えないんです。すみません」と、足早に立ち去った。

■「信頼失墜」医師会が謝罪

 県産婦人科医会によると21日、「あいレディースクリニック」に入院していた十数人の患者のうち、出産間近の3人が県立中部病院など近隣の産科に転院した。体調が比較的安定している9人は退院し、今週中には全員が退去する見通し。県立中部病院が通院外来、相談窓口を担う。佐久本哲郎会長は「クリニックの患者が継続して医療を受けられるよう、近隣の産科と連携していく」と述べた。

 詐欺容疑で逮捕された院長が所属する県医師会、中部地区医師会、沖縄産科婦人科学会、県産婦人科医会の4団体は21日夕、そろって会見した。県医師会の安里哲好会長は「本件が事実であれば、高い倫理性が求められる医師に対する信頼を失墜させるもの。会を代表しておわびする」と謝罪した。