昨年5月に那覇市具志のゲーム喫茶で従業員2人が刃物で切られ死傷した強盗殺人事件で、犠牲になった女性=当時47歳=の長女(25)が、24日までに初めて取材に応じ、「母を返して」と言葉を詰まらせた。奪われた母の笑顔、家族の日常は戻らず、心の傷は癒えない。強盗殺人罪などに問われ、25日が初公判の土木作業員の被告の男(51)=糸満市=に「もう(罪から)逃げないで」と怒りを込めた。

母の遺影を手にする長女。事件前年に母と過ごした最後の思い出になった大阪で撮影した=24日、那覇市内

■喫茶店で勤務中に襲われる

 事件発生は昨年5月25日午前6時すぎ。起訴状によると被告はカッターナイフを従業員に突き付け「財布を出せ」と脅して計30万6千円が入った財布をカウンターに置かせ、殺意を持って2人の首などを切りつけたとされる。女性は間もなく死亡、男性従業員=当時33歳=は全治約2週間のけがを負った。

 長女が母と最後に会ったのは、2019年9月。結婚して横浜市へ移住する前で、当時住んでいた大阪を2人で楽しんだのが最後の思い出となった。

 事件20日前のゴールデンウイークも夫と帰省を予定したが、新型コロナウイルスの影響で9月に延期。会いたがっていた夫の顔を母に初めて見せられたのは、遺体安置室の中だった。首に掛けられた布には、母の血がにじんでいた。

 仕事を朝晩掛け持ちし、女手一つで3人の子を育てた母。真面目で明るく、子ども第一に考えてくれた。事件前は、娘と同じスマホへの機種変更や、いつか横浜で一緒に住むことなどを楽しみに語っていた。

 「一緒にやりたいねって話したことが全部だめになった。なぜ、母は殺されなければならなかったの」と長女。犯人を許せない怒りと疑問は尽きない。

■きょう被告の初公判

 事件からちょうど1年5カ月の25日が初公判の裁判員裁判は被害者参加制度を利用し、家族で参加する。長女は「何が明らかになっても、悲しいだけ。でも犯人は逃げずに、真実を語ってほしい」と訴えた。

 公判で、被告側は殺意については否認し、強盗致死罪などを主張する方針。強盗殺人罪の成立や量刑などが争点となる見通しだ。(社会部・新垣玲央)