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首里城の「見せる復元」が苦戦 ツアーの人数がゼロの日も コロナ禍で関心が離れる不安【動画あり】

2021年10月25日 12:21
 

[再建の現在地 首里城火災2年](上)

 カーン、カーン。午前9時前、首里城正殿につながる奉神門で銅鑼(どら)が鳴り響いた。琉球王朝時代の役人姿に扮(ふん)した首里城公園のスタッフが「御開門(うけーじょー)」と叫ぶと静かに門が開いた。この奥が2年前の火災現場だ。

 現場は昨年6月から一般公開された。公園のスタッフが再建の過程を案内する有料の「ぐるっとツアー」が催され、観光客や地元住民らが利用。ツアーに参加した公務員男性(34)は、7月に鹿児島から転勤したばかり。「火災から2年。どう変わったのかが知りたくて来た」

御庭で「ぐるっとツアー」の利用者に、火災の被害状況などの説明をする首里城公園のスタッフ(左)=16日、那覇市

 門をくぐると、琉球王朝時代にさまざまな儀式が開かれた御庭(うなー)に出た。隅には工事用のブルーシートや機材が置かれている。正殿の地下遺構を覆うプレハブの奥には、重機の姿が見え、南殿・番所の跡地には、工事車両が通る仮設道路も敷かれた。

 ツアーに参加した公務員男性は「何もない更地のままだと思っていたが、それなりに進んでいる印象を持った。こうやって時々来て進捗(しんちょく)を見たい」と語った。

■2026年度の完成へ 工事は順調

 復元を進める沖縄総合事務局によると、2026年度の正殿完成に向け、工事は順調に進んでいる。来年2月には木材を保管・加工する倉庫などが、来年度には工事用の屋根も完成。いよいよ本格的な建設が始まる。

再建現場には、工事用の資材や重機などが様々な場所に置かれている=9月29日、那覇市

 ただ、今回の復元に際して力を入れる「見せる復元」は、新型コロナウイルスの大きな影響を受けた。

 火災前、毎年280万人が訪れていた首里城。国や県は復興への継続的な関心につなげる目的から、復元過程の公開に力を入れる。

 だが、緊急事態宣言に伴う施設の休止などで来場者は伸び悩んでいる。有料区域の来場は昨年度(6月以降)は約22万人にとどまり、本年度(9月まで)はわずか3万6千人しかいない。

■「コロナ禍があまりに長すぎる」

 今年7月に始めたぐるっとツアーも、緊急事態宣言の影響などで活動できず、9月末時点で実質の開催日数は10日にも満たない。その間の利用者はわずかに10人程度だった。10月からは毎日開催しているが、一人も参加がない日もまだある。

 公園を管理する沖縄美ら島財団は、コロナ禍で施設の休止期間もユーチューブやフェイスブックで工事の状況を配信するなど、復興への関心が弱まらないように工夫している。

 しかし、復元に携わる関係者からは不安の声が漏れる。「コロナ禍があまりに長すぎる。火災直後にあれだけあった復興への関心が離れてしまわないか。せっかく再建しても、人があまり来ないなんてことにならないか。不安は大きい」

■支援活動がストップ 焦る住民

 復元に向けて順調に工事が進む首里城。しかし、収束が見えないコロナ禍は「見せる復元」だけでなく、支援活動の自粛や地域行事の縮小などさまざまな影響を及ぼしている。再建の機運が下がらないか。地域住民らも焦りを感じている。

 「せっかく首里城に関心が向けられたのに、活動できなくて歯がゆい」。そう話すのは、首里城復興に向けて、琉球の歴史や文化の継承を目的として結成された「甦(よみがえ)る首里城を守る会」の久保田照子会長(81)だ。

 同会は首里城の復元に際し、ハード面だけでなく、芸能や文化面の継承を重視して、今年4月に設立。顧問や常任理事に人間国宝や重要無形文化財の琉球舞踊保持者らが名を連ねた。

 設立は当初、昨秋の予定だった。しかし、感染拡大で延期に。何とか総会は開いたが、半年以上思うような活動はできなかった。書道や染織の展示会、古典芸能の公演会などを催す計画をしたが、まだ一度も開催しておらず、11月からようやく動きだすという。

 「何もしなければ人々の関心はどんどん薄れる。コロナが早く収まらないと、復元の機運が下がってしまう」と危機感を強める。

■古式行列は無観客に

 琉球国王が旧暦正月の3日に国の安泰や豊作を祈り、城下の寺を詣でた儀式を再現した「古式行列」。首里城周辺を練り歩き、毎年数万人の観客が集まったが、コロナ禍で昨年は規模を大幅に縮小。今年は、さらに無観客で城郭内を歩く形で実施する予定だ。

再建現場では、一般利用者が工事の様子を見学できる通路が設置されている。木材倉庫などを建設するため、別のルートを通る見学デッキが27日にオープンする=9月29日、那覇市

 開催を担う首里振興会の関係者は「感染を考えると致し方ないが、行列は多くの人たちと復興の必要性を確認する特別な機会。それがないのは不安」と言う。

■「復元の熱意 簡単には冷めない」

 ただ、再建方針を議論する国の検討委員会の委員長を務める高良倉吉・琉球大名誉教授は、コロナ禍の影響は多少あるものの、平成の復元時に比べ、今回は人々の関心が高いと感じる。

 南城市の食堂で食事中に、「一日も早い復興をお願いします」と店から刺身のサービスを受けた。首里城の赤瓦に付いた漆喰を剥がすボランティアには、本土からの参加者も多い。

 高良名誉教授は、平成の復元時に関心が高かったのは戦前にあった首里城の姿を知っている人だけだったと指摘。今回は、25年以上存在した首里城の建物に多くの県民が慣れ親しみ、観光客や修学旅行生の増加で県外の人も身近に感じており、状況が違うという。

 「みんな自分なりの首里城のイメージや思い出があるからこそ、復元したいと思っている。その熱は簡単には冷めないと思う」

(社会部・山中由睦)

    ◇   ◇

 首里城が焼失してから31日で2年がたつ。多くの人の期待を背負う復元事業は、順調に進んでいるのか。コロナ禍の影響はないのか。再建の現状や課題を3回にわたって伝える。

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