「掛けお断りします」。沖縄県うるま市平安座島の東川上商店の入り口には、そんな張り紙が張られている。それを知りながら「掛けでお願い」とレジで冗談を言う常連がいる。「なんて書いてあるの? 英語なら読めるけど」とジョークを飛ばす客も。店主は伊禮門幸江(さちえ)さん(63)、幹久さん(22)親子。約70年続く東川上商店を今年、前の店主から引き継いだ。商売経験のない親子に「かきしみらんきよー(掛けはさせない方がいいよ)。店つぶりんどー(店がつぶれるよ)」と助言したのも、助言がちゃんと守られているかを確認しに来るのも島民だ。(中部報道部・平島夏実)

現在の場所に移って約40年になる東川上商店=10日、うるま市平安座島

「掛けお断りします」の張り紙と(左から)4代目店主の伊禮門幸江さん、幹久さん、3代目店主の東川上兼司さん=7日、うるま市平安座島の東川上商店

現在の場所に移って約40年になる東川上商店=10日、うるま市平安座島 「掛けお断りします」の張り紙と(左から)4代目店主の伊禮門幸江さん、幹久さん、3代目店主の東川上兼司さん=7日、うるま市平安座島の東川上商店

■島にお店は必要です

 東川上商店は戦後間もなく、故東川上静枝さんが自宅(屋号ミーサチヤー)で始めた。夫の戦死後は5人の子を養うため、モヤシや缶詰を売った。繁忙期の盆正月となれば、木戸を3、4枚庭先に並べ、その上に商品を置いてさばいたという。

 静枝さんの長男・兼永さん(享年90)が約40年前、現在の場所に店を新築。腕利きの島の大工を集め、鉄筋を組み合わせた6段構造の商品棚や倉庫代わりの2階部分も完成させた。その後、3代目を継いだのは兼永さんの長男・兼司さん(65)。「きっぱり65歳定年」との気持ちで店じまいしようとしていたが、親戚の伊禮門さん親子がことしの元日から引き継いだ。

 「足が悪い人も車のない人もいる。島にお店は必要です。こんなに歴史のあるお店で荷が重いですけど」と親子は笑う。仕入れから戻ってくると、開店待ちの客が出迎え、品出しを手伝ってくれる日もあるという。

■伝えたアドバイス

 仕入れ先は、2代目の頃から沖縄市の中部農連市場。夜明け前に平安座島を出発し、車で片道約30分かけて向かう。兼司さんは「10年くらい、おやじと一緒に買い出しをして、その後ようやく任されました」とはにかむ。「盆正月の後の4~5日は総菜が売れないから、仕入れ過ぎないように」など、父から教わり伊禮門親子に伝えたアドバイスはたくさんあるという。

 平安座島には1980年代半ばごろまで、20カ所以上の商店があったが、現在は東川上商店を含めて2カ所のみ。平安座自治会の五嶋眞智子会長は「パン1個、香典袋1枚。マチヤグヮーは、ちょっと何かが必要なときの大事な存在。島中で応援してます」と話す。東川上商店の壁には初代店主、静枝さんの米寿祝いに贈られた鏡が光っている。