まるでコンクリートを流し込んだかのように海面が灰色に覆われた漁港。白い砂浜も波打ち際に沿って灰色の帯が続いている。見慣れた沖縄の海辺の景色の変わりように言葉を失う。

 小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」が8月に噴火した際に出たとみられる大量の軽石が、南北大東島や沖縄本島、奄美群島などの海岸に漂着している。

 被害は広範囲に及んでおり手作業での除去は難しい。既に漁業や観光業に影響が出ている。早急な対応が必要だ。

 北大東島の東海岸に大量の軽石が漂着しているのを村が確認したのは今月4日。その後、本島各地の海岸や港でも次々と見つかっている。

 ビーチや漁港で軽石の漂着が確認されたのは25市町村、15漁業協同組合に及ぶ。

 国頭村の辺土名漁港は一面が軽石で覆われ、除去しても新たな軽石が漂着して追い付かない状況だ。

 港内のいけすでは、養殖していた魚150匹超が死んでいるのが見つかった。胃袋には軽石が詰まっていて餌と誤認して食べた可能性があるという。

 漁船のフィルターに軽石がが詰まったことによるエンジン故障や、機械トラブルを警戒した出漁の見合わせが各地で相次いでいる。

 これから本格化するモズク栽培やソデイカ漁への影響も懸念される。

 「こんな状況は前代未聞。死活問題となる」という組合トップの言葉は多くの漁業関係者の共通した認識だろう。非常に深刻な事態である。

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 観光業へのダメージも心配だ。

 本島北部では学校単位の宿泊とマリンレジャー体験がキャンセルになったホテルが出ている。グラスボートの運航休止を決めた施設もある。

 県内では新型コロナウイルスの緊急事態宣言が先月末で解除され、沖縄観光の立て直しが進められているところだ。影響が拡大すれば大きな痛手となる。

 1986年に福徳岡ノ場が噴火した際も琉球列島から本州にかけて広く軽石が漂着したが、今回は量が桁違いに多い。

 まずは、被害の把握を急いでもらいたい。事態は日々変化しており、繰り返し見ていく必要がある。

 どうすれば一日も早く軽石を除去し、沖縄の美しい海を取り戻せるか。県や国、市町村、漁協に加えて気象や海洋、火山などの専門家が連携して知恵を絞ってほしい。

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 23日には、糸満市喜屋武岬の沖合で訓練中だった中城海上保安部の巡視艇が軽石を吸い込み航行不能に陥った。

 今後さらに漂着する可能性も高く、元の環境に戻るまで1~2年かかるという専門家の見方もある。海生生物やサンゴなど生態系にマイナスの作用が働くことも懸念される。

 今回の軽石大量漂着は明らかな自然災害だ。事業が打撃を受け、軽石を除去するにも費用がかかる。損失が出た分を国が中心になって補償するよう支援を進めてもらいたい。