国政野党への攻撃を繰り返していた短文投稿サイトツイッターのアカウント「Dappi」を自民党と取引のある企業が運営していた可能性が高まり、注目を集めている。ツイートの一つ「沖縄県民はDNA的に日本人、言語学的にも琉球語は日本語方言」を本紙がファクトチェックすると、結果は「不正確」だった。(編集委員・阿部岳)
■「沖縄県民って日本人じゃん?」
このツイートは2020年7月13日付。作家の竹田恒泰氏がネット番組でこう発言する動画を引用した。「沖縄県民って日本人じゃん? っていうところね。つまりDNA的にも台湾、中国とは違う。日本民族と同一のDNAだということも、もう分かっている。琉球の言葉は日本語方言だということも言語学上分かっている」
これを文章で要約しつつ、アカウント自体のコメントとして「その通り! やれることはやるべき」と書き込んだ。「いいね」と「リツイート」が合わせて6千件超と拡散されている。
本土と沖縄の人々のDNAは「同一」なのか。琉球大学の木村亮介准教授(ゲノム人類学)らが2014年、国際専門誌に発表した論文は、沖縄の人々は台湾やアジア大陸の集団と直接的なつながりがなく、本土に由来することをDNA分析で明らかにした。
一方で「沖縄の集団は本土よりも縄文的要素が大きく、同一集団とはみなせない」と木村氏。つまり沖縄の人々は本土の人々から古い時代に枝分かれしたが、現在は同じではないということになる。
■政治と無縁でない「言葉」
同様のことは、言葉についても言える。沖縄の言葉は古い時代に日本語から枝分かれし、独自のものになった。独立した言語とみなすか方言とみなすかは言語学上も決まった基準がない。よって、どちらと断定することは難しい。
「言葉をどう呼ぶかは政治と無縁ではない」と指摘するのは、琉球大学の狩俣繁久名誉教授(琉球語学)。琉球が独立国だった記憶がまだ新しい戦前は学会でも琉球語と呼ばれていたが、沖縄が米軍支配下になると日本との結び付きを強調するため琉球方言に変わった。復帰から50年近くがたち、今また琉球語と呼ぶ研究者が増えている。
狩俣氏は「最終的には沖縄の人々がどう自称するかにかかってくるのではないか」と話している。
本紙はアカウントを運営しているとされた企業と竹田氏に発信内容の根拠を尋ねた。4日現在、回答はない。
■中国の脅威を強調
匿名ツイッターアカウント「Dappi」が東京都内のウェブ関連会社によって運営されていたことは、攻撃を受けた立憲民主党の小西洋之参院議員らが発信者情報開示の手続きを通じて明らかにした。信用調査会社によると、得意先に「自由民主党」が含まれる。
平日昼間の時間帯のツイートが目立つことや、情報入手が早いことから、ツイッターユーザーの間では組織的運営の可能性が指摘されてきた。
フォロワーは17万5千人とかなり多い。プロフィル欄には「日本が大好きです。偏向報道をするマスコミは嫌いです」などと記す。
2年間で5千以上に上るツイートは野党を批判し、与党を礼賛する内容が多い。「沖縄」の文字を含む発信も少なくとも43件あり、主に中国脅威論を強調していた。投稿は10月1日を最後に途切れている。
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この記事は沖縄タイムス社とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。沖縄タイムス社がNPO「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のガイドラインを参照してファクトチェックしています。(随時掲載)