ことし8月の介護保険制度の見直しが、県内の高齢者を直撃している。
特別養護老人ホーム(特養)などの介護保険施設を利用する低所得者の食費や居住費を補助する「補足給付」が縮小され、自己負担額が大幅に増えたからだ。
県民主医療機関連合会、沖縄医療生活協同組合が県内の特養、介護老人保健施設を対象に調査したところ、28事業所の108人が給付対象から外れ、多い人で月最大約7万円の負担増となっていることが分かった。
介護を必要とする高齢者にとって、あまりに重い負担だ。
見直しは、低所得者のうち、一定の収入や資産がある人が対象だ。厚生労働省によると、全国では約27万人が影響を受ける。調査はごく一部で、県内で負担が増える人はもっと多いだろう。
国が「補足給付」を縮小したのは、増大する介護費用を抑えるのが大きな狙いだ。
介護費用は右肩上がりで増え、2020年度は10兆7783億円に上り、過去最多を更新した。
利用者の自己負担を増やすことで、関連予算を削減できる。
国は介護保険制度を持続するためとするが、個人の負担があまりに大きい。
必要な人が施設に入所できなくなったり、家族の生活が立ちゆかなくなったりする可能性がある。
影響を調べた上で、激変緩和措置など、対策を講じる必要がある。
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介護保険制度は2000年、「介護の社会化」を目指して始まった。
家族が担うものという風潮が強かった介護を社会全体で支えようと、40歳以上が支払う保険料と税金、利用者の自己負担で賄う制度ができた。
要支援から要介護まで、必要の度合いによって、在宅や施設で多様なサービスを選べるようになった。
介護サービス利用者は当初の149万人から増え続け、20年度は532万人を超えた。
高齢化が加速する中で財政難に陥り、利用者の負担増とサービス縮小を繰り返してきた。
一律1割だった利用者負担は収入や所得によっては2割、3割と引き上げられた。特養の新規入所者を原則、要介護3以上に限定するなど、サービス縮小が進んだ。
およそ3年に1度改正を繰り返し、制度が複雑化して、利用者に分かりづらいものになっているのも問題だ。
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日本の平均寿命はどんどん延び、今や「人生100年時代」の言葉が定着している。
来年には「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者になり始め、国民の5人に1人が後期高齢者になる2025年も目前に迫る。
介護需要が高まる一方で、支え手となる現役世代は減り続け、制度維持に黄信号がともる。
急速に進む少子高齢化に向けた、抜本的な見直しが必要だ。
新しく発足した岸田政権には最優先で取り組んでほしい。