ヤフーニュースと本屋大賞が共催し、全国の書店員の投票で選ばれる「2021年ノンフィクション本大賞」が10日発表され、琉球大学教授の上間陽子さんの著書「海をあげる」(筑摩書房)が大賞に輝いた。インターネットでライブ中継された発表会で、上間さんは「沖縄の今に対する書店員の皆さまの応援なんだなと思う。この賞は私が受けたのではなく、沖縄に対する賞であり、沖縄でしんどい思いで生きている子たちへのはなむけのような賞だなと思っている」と喜びを語った。沖縄県関係者の受賞は初めてで、トロフィーのほか副賞として取材支援費100万円が贈られた。

上間陽子さん

上間陽子さん著「海をあげる」

上間陽子さん 上間陽子さん著「海をあげる」

 同作は、沖縄で若年出産した母親や風俗業界で働く女性たちの調査を続ける上間さんの初エッセー集。汚される辺野古の海や幼い娘との生活、若い女性たちの声を紡ぎながら、政治や暴力に踏みにじられる沖縄の日常を浮かび上がらせている。

 上間さんは作品について「私たちの国のアキレス腱について書いた」と述べた上で「尽力されたお一人お一人に、感謝と同志としてのつながりを感じている。残されたのはただ一つの希望。それは、私たちはまだ正義や公平、子どもたちに託したい未来を手放さないということだと思う」とスピーチを締めくくった。

 筑摩書房によると、現在の発行部数は5万500部。上間さんは今年、同作で沖縄書店大賞沖縄部門の大賞に選ばれたほか、文筆家の故池田晶子さんの業績を記念した「(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」を受けている。

 ノンフィクション本大賞は今年で4回目。20年7月から1年間に日本語で出版されたノンフィクション作品の中から書店員による2度の投票で大賞を決めた。その他の大賞ノミネート作品は次の通り。

 「あの夏の正解」(早見和真・新潮社)▽「キツネ目 グリコ森永事件全真相」(岩瀬達哉・講談社)▽「ゼロエフ」(古川日出男・講談社)▽「デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場」(河野啓・集英社)▽「分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議」(河合香織・岩波書店)