50年前、沖縄では「日本に復帰したら雪が降る」といううわさ話が広まっていた(らしい)。「いったい誰がどうやって広めたの?」真相を掘り下げようと、NHK沖縄放送局の荒木さくらアナウンサーは那覇市の平和通り商店街周辺で聞き込みを始めた。

聞き込みをした荒木さくらアナウンサー(右)。沖縄タイムスの豊島鉄博記者は沖縄市に行ってもらいました=10月6日、那覇市内

 「笑わすなよ!そんな話は聞いたことない」「はじめて聞いた。降るわけがないでしょ、誰が考えても。地形が違うんだもの」「信じるわけないさ。沖縄は沖縄。結局ね根拠はないと思うよ」「そんなうわさするかね?自然現象だから復帰とは関係ないさ。文献だと江戸時代に降ったらしいけど、沖縄ではそのくらいのものよ」
 
 聞き始めて約20人。誰もこのうわさを知らないという。企画は成立するのか・・・雲行きが怪しくなってきた頃、復帰当時20代だったという一人の男性と出会った。

 「聞いたことあるよ。当時僕は22、3くらい。復帰したら本土と同じ季節になるとか、同じことがあると思ったんじゃないですかね。子どもたちが信じていた可能性はあると思うね。冗談だとは思っていたけど、僕もちょっとだけ思ってましたからね」。

 さらに聞き込みを進めていくと、男性と同じ年代で雪のうわさを知っているという女性を発見!

 「(雪のうわさは)聞いたことあるよ。20いくつくらいの時に、向かいの商店街で商売していたんだけど、そばに年取ったおばあちゃんたちがいっぱいいたのよ。その「おばぁ」たちが、復帰したら内地と一緒に雪が降るからさ楽しみねって言ってたのをよく聞いたよ」

 女性は雪が降る話を信じていたの・・・?
「半々だった。内地が雪降るから、内地と同じようにって感じじゃなかったかな。昔はね、戦争未亡人のおばあちゃんたちがたくさんいたからね。そのおばあちゃんたちが自分たちの想像で話したり何したりで、まさかとは思ったけど、真剣な顔で話すもんだから。」 

 子どもたちの間で広まっていると思った話がまさかおばぁたちも話していたなんて。謎は深まるばかりだ。

おばぁたちのユンタク(おしゃべり)のネタ?

 荒木アナが聞き込みを続けるとこのうわさを話していた「おばぁ」を知っているという男性と遭遇。
 男性の名前は久貝恵一さん(81)。那覇市で商店を営んでいるという。約60年間、商店街の移り変わりを見つめてきた。

 「おばあさんから聞いたことはあるよ。『ヤマト世なったら、ゆち(雪)も降るさ』って。公設市場で商売しているおばあちゃんたちから聞いた。市場で何十年も商売しているおばあたち。集まって暇つぶしにゆんたくしてた」

久貝さんはこのうわさ話、信じていた・・・?
「信じるわけないさ!沖縄は寒い国でもあるまいし。みんな面白いおばあたちだった。冗談半分で言ってた。若い人をおちょくって言ってる人もいた」。 

 「おばぁ」はいったいどこにいたのだろうか。

「公設市場の化粧品(衣料部・雑貨部)があるでしょ。あそこは昔、みんなお家だったの。市場に行ったらなんでもあるということで、いろんな方面から人が来てた。何十人もいた。みんなおばあ。若い人はひとりもいない。30人くらい。1軒間口でみんな商売してた。その人たちがお家でも冗談で子どもたちに言ってたりしたんじゃないかな」。 

久貝さんに案内してもらってたどり着いたのは那覇市公設市場の衣料部・雑貨部。

那覇市牧志公設市場(資料写真)

「まさにここだね。ちょうどこのくらいの感覚だった。上に座っている人もいるし、床に座ってる人もいた。ここがずーと通り道になってた。ここでね。『ヤマト世なったら、ゆち(雪)も降るさ』って聞いた」

復帰前、沖縄の人たちは日本に復帰することで貧しさから脱却し、豊かになることを願っていた。
おばぁたちもそんな希望をうわさ話に込めていたのだろうか・・・。
50年前の沖縄の人たちに思いをはせながら荒木アナは商店街を見つめた。