古宇利島を望む大宜味村の海岸を背に坂道を車で上る。風に揺れながら、やわらかな日の光でススキが麦色に輝いている。江洲公民館を過ぎた頃、沖縄では珍しいソバが畑に芽吹いていた

▼大宜味村蕎麦生産組合会長の平良幸太郎さん(67)によると、今月初めにまいた種が12月初旬には花開く。雪景色のような白い花畑にミツバチが舞うという。年明けには収穫期を迎え、日本一早い新そばとなる

▼始まりは耕作放棄地の再生だった。畑の赤土流出を防ぐためにソバを植えると、きれいに花が咲いた。沖縄でも栽培できるのではと試行錯誤が続き、10年余り前から生産が始まっている

▼3年目、イノシシが300坪を食い荒らして全滅。畑をフェンスで囲んだ。カラスは空包で追い払う。舞い降りてもくちばしは届かないが、踏みならして食べていくという

▼栽培期間は約60日で、さほど手を掛けなくてもいいところが魅力だが、収穫したらその日で乾燥しないと味も香りも台無しになる。注文が入ってから挽(ひ)くので、需給のバランスがさらに大切になる

▼うまいそばは、挽きたて・打ちたて・茹(ゆ)でたての「三たて」が条件とも言うが、穫(と)れたてが加われば風味も増して美味。大宜味産はねばりと香りが特徴という。白い花の絨毯(じゅうたん)と新そばと。目でも舌でも季節を味わいたい。(粟国雄一郎)