平良港に入港した自衛隊の輸送艦から、弾薬を積んだ大型トラックが次々と降りてきた。物々しい雰囲気の中、車両は列を成し市街地を走り訓練場へと向かった。

 宮古島に新設された陸上自衛隊の「保良訓練場」に、地対空・地対艦ミサイルとみられる弾薬が運び込まれた。

 宮古島市の座喜味一幸市長は、民間港の使用について、新型コロナウイルス感染拡大を理由に一度は「不許可」とした。だが今月5日、法令上や申請書類に不備がないとし「許可」の判断をした。

 弾薬搬入を巡っては、過去に事実とは異なる説明が行われ、住民不信を招いたことがある。

 陸自の宮古島駐屯地内に「警備に必要な小銃弾などの保管庫」と説明していた施設が、実は弾薬庫で、中距離多目的誘導弾や迫撃砲を保管していたのだ。当時の岩屋毅防衛相が謝罪し、島外へ撤去する問題に発展した。 

 今回の弾薬搬入でも、搬入の日時や弾薬の種類、輸送経路など住民が求める情報は開示されていない。

 自衛隊配備の前提は地元の同意を得ることと、説明責任を果たすことである。その説明が果たされたとは言えず、住民の間には不安と不信が広がっている。

 港の使用を許可した座喜味市長自身、「地域住民への説明は不十分だ」と指摘している。玉城デニー知事も「配備ありきで進めるのは遺憾だ」と語る。

 住民の安全を守るのは市長や知事の仕事だ。毅然(きぜん)とした姿勢で臨むべきだった。

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 中国の海洋進出をにらみ、防衛省は南西諸島への自衛隊配備を急ぐ。

 宮古島駐屯地の開設は2019年。20年にミサイル部隊が配備され、保良訓練場は今年4月、運用が開始された。

 ミサイル部隊はすでに奄美大島にもあり、来年度予算の概算要求に石垣島のミサイル部隊の経費が計上されている。さらに本島内の勝連分屯地に配備する方針も固まっている。つまりこれら地域が「最前線」となるのだ。

 今年5月、河野克俊・前統合幕僚長は日本記者クラブで会見し「台湾有事になれば南西諸島が一つの戦域になるのは軍事的には常識」と語った。

 力を背景にした中国の海洋進出、東シナ海・南シナ海での一方的な現状変更の試みは容認できない。

 しかし抑止力が破綻し、中国のミサイル攻撃を受けたとき、犠牲になるのは誰なのか。沖縄戦体験者の不安を軽く考えてはいけない。   

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 米中対立の激化によって、米軍基地の過重負担に苦しめられてきた沖縄で、自衛隊も加わり「軍事要塞(ようさい)化」の動きが進む。東アジアで軍拡競争が起きるのではないか、それを危惧する。

 対立をエスカレートさせない、このことが何よりも大事だ。 

 日本、中国、米国が3者協議の場を設け、平和のための自制を求める共同宣言を発することを期待したい。

 緊張緩和の意思を行動で示すことが重要だ。