米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平選手が、ア・リーグの最優秀選手(MVP)に選ばれた。

 今季、投打の「二刀流」で超人的な活躍を見せ、全米野球記者協会の会員全員が1位票を投じる、満場一致での快挙だ。

 偉業をたたえたい。

 日米とも球界では選手の専門化、分業化が進む。二刀流は肉体的、精神的にも負担が大きく、「どちらも中途半端になる」と懐疑的な見方も強かった。二刀流でトップを狙うことはいわば「常識破り」だった。

 そんな世間の常識を大谷選手は覆した。実績を積み重ね、大リーグのトップに立つことが可能だと証明して見せたのだ。

 固定観念にとらわれず、自分が目指す高みへ、果敢に挑戦する姿は私たちの胸を打った。

 今季の成績は、投手で9勝2敗、防御率3・18、156奪三振。打者でも2割5分7厘、リーグ3位の46本塁打、100打点、26盗塁と目覚ましい。オールスター戦では史上初の二刀流で先発出場を果たした。

 MVPは日本選手では2001年のマリナーズのイチロー選手以来20年ぶり、2人目となる。

 活躍を伝えるニュースに日本中がくぎ付けになった。新型コロナウイルス感染拡大で暗く落ち込みがちな日々の光となり、勇気と希望を与えてくれた。

 大谷選手には「ありがとう」の言葉を贈りたい。

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 ここに至るまでの道のりは平たんではなかった。

 負けず嫌いで、野球が大好きな少年は、投げることも打つことも両方好きで、どちらも上達したいと、鍛錬を重ねてきた。

 大リーグ入りを希望し、投手一本でいく決意もした。ドラフト会議で指名した日本ハムが「投手と野手の二刀流のパイオニアとして育ててみたい」と、道を開いた。

 23歳で渡米し、1年目に4勝、22本塁打で新人賞に輝いたが右肘を故障し、靱帯(じんたい)再建の大手術を受けた。さらに左膝も手術し、昨季は0勝、打率1割9分の不振に陥った。

 4年目となる今季、二刀流を続けられるかの瀬戸際に立たされ、背水の陣で臨んだ。投手として160キロを超える剛速球を繰り出し、打者としては本塁打王に迫る数のホームランを放つなど、投打両方でトップクラスの活躍を見せた。

 逆境さえ楽しんでいるような笑顔が印象的だった。

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 大谷選手は帰国後、「もっと高くいける」と語り、年齢的に選手としてピークを迎える今後5~7年が「勝負じゃないかと思う」と意欲を見せた。

 高校時代には「世界最高のプレーヤーになる」と目標を書いた。大谷選手なら、さらに、誰も到達したことのない場所にたどり着けるかもしれない。

 これからも自分のスタイルを貫き、常識を打ち破って、高みを目指してほしい。今から来季が楽しみだ。大谷選手の挑戦を見守りたい。