政府が新型コロナウイルスに対応した経済対策として、介護職や保育士の賃金を3%程度引き上げる方針を決めた。

 この分野はかねて、賃金の低さが問題になっており、政府が待遇改善に取り組むことは評価できる。

 岸田文雄首相は賃上げを「最優先課題」だとし、自身が掲げる分配戦略の柱に位置付ける。早ければ来年2月から、支給を開始する考えだ。

 介護職、保育士は1人当たり月9千円程度の引き上げになる。幼稚園教諭の賃金増にも取り組むという。

 賃上げは前進ではあるものの、まだ十分とは言えない。

 2020年の全国の職種別平均賃金を見ると、介護職は月29万3千円、保育士は30万3千円で、全産業の平均35万2千円を大きく下回る。

 3%賃上げしてもまだ、平均賃金に届かない。

 介護職、保育士などは「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる。社会に必要不可欠(=エッセンシャル)なサービスを提供する仕事を担っているからだ。

 コロナ禍では、感染リスクにさらされながら仕事に当たり、その役割の大きさが社会で、より認識されるようになった。

 仕事の中身に比べ報酬が低く、「3K」の職場とも言われ、なり手不足や、離職率の高さを招いている。

 こうした現状を改善するのは政治の責任である。

 政府には、コロナ収束後も見据えた、中長期的な視野で、待遇改善に本腰を入れて取り組んでほしい。

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 気になるのは財源だ。

 政府は介護職などの待遇改善に補正予算で約2600億円を充てるという。来年10月以降の財源は、来年度の当初予算で捻出する計画だ。

 岸田首相は、公的価格の在り方を見直す考えを示している。

 介護、保育などのサービスの価格である「公的価格」は政府によって決められる。

 だが、公的価格が引き上げられると利用者の負担が重くなる。利用者の負担が重くなれば、利用控えなど、新たな問題も出てきかねない。

 国民の理解を得ながら、どれだけ公費を増やしていくのか、議論が必要だ。

 待遇改善を本格的に軌道に乗せるための財源づくりは総合的に判断する必要がある。 6日から始まる臨時国会で、実質的な議論を深めてほしい。

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 今回の賃上げは、介護や保育現場の慢性的な人手不足を解消するための対策の一つだ。

 介護や保育は、人間の喜怒哀楽や人生、未来に関わり、やりがいと誇りを持って働いている人も多い。

 意欲のある人が働き続けるためには、待遇改善はもちろん、人材育成やキャリアアップのシステム作りなども欠かせない。

 少子高齢化が進む中、この分野の働き手の存在意義はますます大きくなる。

 岸田首相には、強みとする「聞く力」を発揮し、現場の声にしっかりと耳を傾け、有言実行で取り組んでほしい。