臨時国会が召集された。岸田文雄首相が衆院選を経て初めて野党との本格論戦に挑む。

 岸田首相は所信表明演説で、財政支出が過去最大の55兆7千億円となる経済対策を「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」とアピールした。

 「厳しい状況にある人々、事業者に対して、17兆円規模となる手厚い支援を行う」など、核となる事業の予算規模をちりばめているのが特徴だ。

 新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」への備えや経済の回復のために一定の予算規模は必要だろう。ただ、重要なのは事業が規模に見合った効果を上げられるかだ。

 18歳以下への10万円相当を給付する事業については、現金とクーポンに分けて配ると、全額を現金支給とするよりも事務費が約900億円余計にかかることが分かり、疑問の声が上がっている。納得できる説明を求めたい。

 首相が掲げる「新しい資本主義」について主役は地方だと強調した。デジタル化で地方から国全体へボトムアップの成長を実現するというが道筋がよく見えない。「成長と分配の好循環」にどうつなげるのかを語ってほしい。

 首相は「信頼と共感を得ることができる、丁寧で寛容な政治を進める」と表明した。

 安倍、菅政権では国会軽視が甚だしく、説明から逃げる姿勢が度々批判を浴びていた。信頼と共感を得る政治を実現するなら審議を急がず論戦を深めてもらいたい。

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 沖縄については、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を進め、一日も早い全面返還を目指す、と従来の政府方針を踏襲した。

 辺野古が「日米同盟の抑止力と普天間飛行場の危険性の除去を考え合わせたときの唯一の解決策」との文言も繰り返した。

 建設予定海域に広がる軟弱地盤の改良のため工期が大幅に延びるにもかかわらず「一日も早い」という言葉は説得力を持たない。

 「強い沖縄経済をつくるための取り組みを進める」と明言した点は評価したいが、それではなぜ県が必要とする沖縄関係予算の3千億円台維持を認めないのか。政府のコントロールが強まる予算の仕組みも懸念される。

 米軍基地が沖縄経済発展の最大の阻害要因であるのは明らかだ。経済の強化に目を向けるならば、基地問題にも具体的に踏み込むべきである。

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 臨時国会では、国会議員への月額100万円の「文書通信交通滞在費」の扱いも焦点となる。

 日割り支給に変更する法改正は、使途公開なども加えるべきだと主張する野党と、日割り以外の見直しに消極的な与党側とで足並みがそろわなくなった。

 そもそもインターネット時代に、通信や書類発送でこれほどの費用が必要か。未使用分を返納する義務がないのも疑問だ。問題の多い制度であり「日割り」だけで済ませず国民が納得できる結論を出してもらいたい。