社説

社説[米軍標的に訓練]孤立深める暴挙やめよ

2017年3月9日 09:42

 北朝鮮が6日に秋田県沖の日本海向けにミサイルを発射したのは、在日米軍基地攻撃を担当する部隊だった、と北朝鮮の朝鮮中央通信が報じた。金(キム)正(ジョン)恩(ウン)朝鮮労働党委員長が立ち会ったといい、有事に在日米軍基地を標的にすることを明示したものだ。

 米軍基地が集中する沖縄の状況を、かつて米国防総省高官は「小さなかごに、あまりにも多くの卵を詰めすぎる」と表現したことがある。別の元国防総省高官も沖縄に米軍基地が集中することの脆(ぜい)弱(じゃく)性を指摘している。

 沖縄に住む住民が口々に危惧するのは沖縄戦の歴史体験から出てきたことだ。軍事基地は、攻撃のターゲットになる危険な存在なのである。

 北朝鮮のミサイル発射は国際社会に対する挑戦である。東アジアの緊張を高める暴挙を直ちにやめるべきだ。

 弾道ミサイル4発は同時発射され、3発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に、1発はEEZ付近に落下した。EEZは領海と公海との間に設定され、日本が漁業をし、天然資源の開発ができる水域である。漁業関係者に被害が出なかったことは幸いだが、とても許せることではない。

 北朝鮮の狙いは何か。米韓は今月1日から昨年同様「史上最大規模」の合同軍事演習をしている。北朝鮮指導部を狙った訓練も実施しているとされ、演習に対抗するためとの見方がある。同時発射された4発のミサイルを迎撃するのは弾道ミサイル防衛(BMD)では困難で、日米のミサイル防衛を突破する能力があることを誇示するためだとか、日米同盟強化に突き進む日本政府をけん制する意図があるとの受け止め方もある。

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 正恩氏は今年1月、米本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験準備が「最終段階に入った」と表明した。オバマ前米大統領は北朝鮮が非核化措置を取るまで交渉に応じない「戦略的忍耐」政策を取った。だが、この間に北朝鮮は核・ミサイル開発を続けた。トランプ大統領は北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定することを検討しており、今回のミサイル発射は対北政策を見極める狙いもありそうだ。

 韓国は朴(パク)槿恵(クネ)大統領の政治スキャンダルで機能していない。安倍晋三首相は日米同盟の強化に躍起で、軍事に軍事で対抗する「安全保障のジレンマ」に陥っている。日米韓は対北朝鮮政策でそれぞれの事情を抱えている。

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 マレーシアで、正恩氏の異母兄、金(キム)正(ジョン)男(ナム)氏が猛毒の神経剤VXで殺害された事件は、北朝鮮の国家ぐるみの犯罪の疑いが濃厚となり、数少ない友好国だった両国の関係が急速に悪化している。

 その直後のミサイル発射である。事件から目をそらすためとの見方もあるが、正恩氏は脅威を高めた上で交渉する「瀬戸際外交」はもはや通用しないことを知るべきだ。

 中国は「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備に反発している。一筋縄ではいきそうにないが、米中を中心に6カ国協議を再起動し、北朝鮮を交渉の場に引き出すことも考えるべきだ。

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