民主主義が世界の至る所で試練に立たされている。

 バイデン米大統領の呼び掛けでオンライン形式で開催された初の「民主主義サミット」が10日、閉幕した。

 欧州各国や日本、台湾など90以上の国・地域が参加する首脳級会合としては異例の規模。一方で米国が専制主義国家と見なす中国やロシアなどは招かれなかった。

 バイデン政権は、世界の現状を「民主主義と専制主義の闘い」と位置付ける。今回のサミットは民主主義の旗下に結集し、「専制主義を押し返す」狙いがあった。

 招待されなかった中国は「米国は分裂と対抗をあおっている」と猛反発する。独自の民主制度を発展させたと主張する習近平指導部は、米国の民主主義を批判するキャンペーンを展開している。

 民主主義の内実が、これほど世界的な規模で問われたことはあまり例がない。

 同じ日、ノルウェーの首都オスロではノーベル平和賞の授賞式があった。言論を守るため権力と対峙(たいじ)してきたジャーナリストの一人、フィリピンのマリア・レッサさんは授賞式でこう語った。

 「事実なくして真実はなく、真実なくして信頼はなく、信頼がなければ民主主義は存在し得なくなる」

 「民主主義後退」への危機感から、危険を冒してでも事実を追求する決意を示したのである。

 民主主義サミット自体は理念先行の議論が目立ったが、バイデン政権は独立メディアの支援や、公正な選挙の擁護などへの拠出を決めた。

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 サミットには民主主義再生の目的もあった。いわゆる自由民主主義を標榜(ひょうぼう)する欧米、日本なども「民主主義に対する試練」に直面しているからだ。 

 米国では1月にトランプ前大統領の支持者らが大統領選の結果を覆そうと連邦議会を襲撃する事件が起きた。黒人層などを事実上の対象とした投票権制限の動きも加速する。

 岸田文雄首相は自民党総裁選出馬の際、「わが国の民主主義が危機にひんしている」と語った。説明責任を尽くさず強権的な手法が目立った「安倍・菅政権」の問題に触れたのだが、危機は今も続く。

 私たちが考える民主主義とは、自由で公正な選挙、法の支配、権力分立などの仕組みを通して、市民の権利と自由を守っていく政治制度や政治運動のことである。

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 復帰前、米軍統治下にあった沖縄では、軍事上の必要性が全てにおいて優先された。そのためしばしば基本的人権や財産権が脅かされた。

 これに対し沖縄の人々は日本国憲法や世界人権宣言、植民地独立付与宣言などを根拠に自らの権利獲得に立ち上がった。そういう経緯がある。

 政治学者の宇野重規さんは『民主主義とは何か』の中で「自分たちの社会の問題解決に参加すること、それを通じて、政治権力の責任を厳しく問い直すこと」が民主主義にとって不可欠の要素と書く。

 危機が叫ばれる民主主義を問い直す機会としたい。