「やっぱり落ちたな、と」。ダイビングチーム「すなっくスナフキン」の西平伸さん(63)は思い出す。むしろ「これで大浦湾の埋め立て計画は止まると思った」。沖縄県名護市安部の海岸に米軍機オスプレイが墜落し13日で5年。西平さんの期待は裏切られ、新基地建設工事は進む。
■豊かな地元の海
大浦湾に面する瀬嵩区で生まれ育ち、20年近く湾に潜って生き物を撮影し情報発信してきた。チームの活動の中で新種も見つかった。「まだまだ新種がいる。多様性豊かな場所なんです」と声が弾む。
魚やサンゴ、貝類、甲殻類、海藻…。海中の生物の写真をブログや写真展で紹介し、本も出版した。「大浦湾の素晴らしさを多くの人に見てほしい。これだけ豊かな自然があれば、それを生かして観光も発展させ、新基地がなくても自立できる」との思いがある。
軟弱地盤がある海域は水深深くに泥場が広がり「他にない環境でブログや写真展のネタの宝庫だった」。だが今は基地建設のフロートに囲まれて入れない。
■物体まとうウニ
5年前、大浦湾に近い安部海岸にオスプレイが墜落した時は「危ないといわれていたオスプレイが、たまたま近くに落ちただけ。どんな気持ちだったかも、忘れちゃった」という。
だが海底で見た光景は鮮明に覚えている。プロペラの一部とみられる黒いカーボン製の物体が一面を覆い、カムフラージュのため海藻などをまとうシラヒゲウニは、代わりにその物体をまとっていた。
「拾っても拾ってもなくならない。今も砂に埋もれている」と声を落とし「全国的に報道され、新基地建設中止のうねりができると思ったが、なぜか沖縄はそうはならない」と声を詰まらせる。
オスプレイは今も上空を通り過ぎる。「とかげのしっぽ切りだ。しっぽはただ、ばたばたもがくことしかできない」(北部報道部・西倉悟朗)