泡盛に唐辛子を漬け込んだ「コーレーグース」。沖縄そばやみそ汁といった沖縄料理のおいしさを引き立てる調味料だ。辛党のぼくは、自宅では1度で1瓶を使い切ることもあるほど愛用している。ところが、それを見た知人に「それじゃ酔ってしまうよ」と指摘された。ほんとに!? コーレーグースで酔うのか調べてみた。

コーレーグースを沖縄そばになみなみと注ぐのも快感

■大の辛いもの好き

 コーレーグースは、沖縄そば屋や大衆食堂にも置かれ、沖縄県民は日常的に使う調味料。 好きな人はスープ類だけでなく、チャンプルー(炒め物)、タコス、ピザ、なんなら刺し身にまでもかけてしまう。大学生の頃に辛党に目覚めたぼくは、使用量が徐々に増えていき、今では1回の目安が1瓶の半分くらいになっている。調子の良い時は1瓶すべて使い切ることもある。そして、その辛さとおいしさをかみしめながら、幸福感にひたっていく。

 ところが、県外の知人から「そんなに入れたら酔うから気をつけなよ」と指摘されてしまった!コーレーグースとの付き合いは20年以上になるが、これまで酔った自覚はない。説明すると、その場に居合わせた他のメンバーも「そんなことはないはずだ」と聞く耳を持たない。

泡盛に唐辛子を漬け込んだコーレーグース

 コーレーグースをこよなく愛するウチナーンチュによく言えたもんだ。その時は憤慨したが、少し気になった。確かに泡盛を沖縄そばに入れることと大差ない気がする。でも、漬け込んでいる間にアルコールが抜けているのではないだろうか。

■警察に聞いてみた

 しばらくして、「『コーレーグースを沖縄そばに』酒気帯び運転容疑で17歳逮捕」の記事をネットで見つけて驚いた。2019年5月に、バイクで衝突事故を起こした男性が「沖縄そばにコーレーグースを大量に入れた」と供述したという。呼気からは基準値の2倍のアルコールが検出されたとある。

 コーレーグースは酔うのか―。

 不安が募り、沖縄県警を訪ねた。担当者は「警察官として25年間勤めているが、コーレーグースで有罪になったというのは聞いたことがない」という。

 じゃあ、あの記事は?

 「記事に掲載されたのは逮捕直後の初期供述で、その後の取り調べなどで言い分が変わることもある。コーレーグースによる酒気帯び運転で有罪が下されたというニュースが出ていないということは、そうではなかったという蓋然(がいぜん)性が高い」。

 確かにそうだ。それでは、コーレーグースに対する沖縄県警の見解は?

 「公式な見解はないと思う。コメントのしようもない。コーレーグースは泡盛で作られているので、摂取しすぎたら、どうなるかは常識として分かるはず」。ぼくが食い下がるほどに、困惑の度合いを深めながらも丁寧に答えてくれた。

2019年5月の沖縄タイムスのWeb記事

■東江そばで食べる

 こうなったら、試してみるしかない。

 なじみの東江そばに向かった。つるつるでこしのある生麺と、じっくり煮込んだ三枚肉、軟骨ソーキ、本ソーキの3種類の豚肉をのせた「東江そば」が地元で人気の沖縄そば専門店だ。店主の東江秋人さんは、戸惑いの表情を浮かべながら、実験を承諾してくれた。お店に迷惑をかけるといけないので、新品のコーレーグース2本を持ち込んだ。

 食べる前にアルコールチェッカーで呼気を計る。「0.00㎎/L」。正常だ。

 まずは数滴垂らして、食べてみる。鰹と昆布のだしに、コーレーグースの辛みが相まっておいしい。アルコールチェッカーは「0.06㎎/L」。え、上がるの?やはりアルコールを摂取しているということなのか。でもさすがに、酒気帯び運転の数値までにはならないだろう。

 いつも通りの量をかけてみる。これほどおいしい沖縄そばなら、やはり多めがいい。心を高ぶらせて、なみなみと注ぐと瓶の半分くらいを使ってしまった。約75㎖だ。

 食べてみると、おいしい!やっぱ辛さもうまみの一つなんだとかみしめながら味わった。

 さあアルコールチェッカーは?

 0.63㎎/L!!

0.63mg/Lを計測したアルコールチェッカー

 酒気帯び運転を認定される0.15㎎/Lどころか、免許取り消しの0.25㎎/Lをも一気に超えてしまった。(※計測した数値は目安です。計測方法や体調、環境などにより、数値が異なる場合もあります)

■一般的な量ならば

 デジタル部の吉元晋作さんも試してみる。辛いものが苦手という吉元さんは、頑張ってどんぶり1周分かけてみた。「入れすぎた」とうめきながら食べていたが、アルコールチェッカーは0.00㎎/Lで変化なし。一般の人が辛いと思えるほどの量を入れても安全なようだ。

 アルコールが入っていると分かると、なんだか酔った気分になってきた。帰りは吉元さんが運転してくれた。それにしてもアルコールチェッカーの濃度が高い気がする。会社に戻って計ってみると、0.06㎎/Lまで下がっていた。沖縄そばを食べてから1時間が経っている。

 仮眠をとって、さらに1時間後には0.00㎎/Lになった。

 アルコールは2時間で抜けたのだろうか。

 適正飲酒の啓発に取り組む一般社団法人のおきなわASKに問い合わせてみた。「そんな量のコーレーグースを使う人はいませんよね」と何度もいぶかしがる担当者を説き伏せて、教えてもらった。

■分解にかかる時間

 アルコールは飲んだ量によって分解にかかる時間が変わるという。純アルコール20gの「1単位」を分解するのに男性はおおむね4時間、女性は5時間かかる。

 

 1単位の目安は、ビール中ジョッキ1杯、チューハイ(350㎖)1缶、ウイスキーはダブル1杯。

 泡盛はアルコール度数30度が70㎖で純アルコール21g(30%×70㎖=21g)となり、1単位相当となる。

 ぼくが使ったコーレーグースの度数は、27.6度と販売元に教えてもらった。使用量は75㎖だったので、純アルコールは20.7g(27.6%×75㎖=20.7g)。1単位を超えた。完全に分解するのに4時間かかることになる。

 呼気アルコールにするとどれくらいの量になるのだろうか。

 担当者は「換算したことがないので分からないが、体重や健康状態によって変わってくるので算出するのは難しいだろう」。

 「そもそも、基準値を超えていなくてもアルコールを口にした時点で運転をしてはいけない。アルコールを摂取すれば、動体視力が落ち、判断も鈍る。コーレーグースも度を超えて摂取したなら、酔っていると認識した方が良いのでは」とアドバイスしてくれた。

 県外の知人たちの指摘は当たっていた。大好きなコーレーグース。使うのは休日のみに抑えることにしよう。実は最近、ラー油作りにハマっている。平日は自家製ラー油で辛みを楽しむことにする。