米軍の振る舞いはめちゃくちゃだ。県民の安全への配慮のなさにあぜんとするばかりである。
キャンプ・ハンセンで新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生している問題で、感染者の出た部隊が米国出国時も日本に到着直後もPCR検査をしていないことが明らかになった。
ワクチン接種済みであることを前提に、入国後5日目の検査にとどまっていた。米兵らは入国直後でも施設内で自由に移動できていたことも分かった。とんでもない話だ。
その結果、クラスター規模は日増しに拡大し23日現在、計232人に膨らんでいる。
「隊員は行動制限下に置かれて」いる、と在沖米海兵隊が当初表明していたのは何だったのか。
「基地外の地域住民との接触は一切ない」と言っても日本人従業員らの感染が相次いでいる。しかも世界で急拡大している新たな変異株「オミクロン株」への感染だ。家族らも含め既に10人に上る。
県が指摘するように「基地内で感染した可能性が高い」とみるのが自然だ。
こうした深刻な事態を招いてなお、米軍側の対応は誠意に欠けている。クラスターがオミクロン株によるものかもいまだに判明していない。
日本政府の要請でようやくゲノム解析を実施し、結果を日本側と共有する意向を明らかにしたものの「最終調整中」という。あまりにも時間がかかり過ぎる。
玉城デニー知事は米本国からの軍人・軍属の移動停止や基地外への外出禁止などの措置を求めている。県民の健康が危ぶまれている以上、クラスターが収まるまでは外出禁止措置もやむを得まい。
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日本では先月末から、一般の外国人の新規入国が禁止された。特定の国・地域から帰国する日本人らにも指定宿泊施設での待機を求めている。扱いがあまりにも違い過ぎる。
米軍人が検査を受けずに入国できるのは、日米地位協定で米軍の構成員は旅券や査証(ビザ)に関する国内法の適用から除外されているからだ。
基地から入国した場合、検疫をしたかどうかさえ確認しようがない「ブラックボックス」化は、以前から疑問視されていた。
地位協定の中でも、こと住民の健康に関係する検疫については重要である。やはり地位協定を改定して国内法を適用すべきだ。
昨年の米軍クラスター発生時にも県民が知りたい情報は得られなかった。今回の事態を許したのは、県民の不安を軽視してきた日本政府の怠慢でもある。今後どう取り組むのか具体的に示してもらいたい。
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大規模クラスターが発生しているさなか、ハンセン所属の米兵が酒気帯び運転の疑いで逮捕された。緊張感に欠けている。
マスクを着用せずに基地の外に出る米兵の姿も県民の不安を増幅させている。
日米地位協定の3条は米軍に「公共の安全に妥当な考慮」を義務付けている。県民の命や安全を軽んじる米軍に、沖縄に駐留する資格はない。