沖縄振興の基本理念からの逸脱と地域の分断が、露骨に透ける予算である。

 2022年度の沖縄関係予算案が2684億円で閣議決定された。本年度当初から11%、326億円の大幅減である。3千億円の大台を割り込むのは12年度以来だ。

 中でも使途の自由度が高く市町村が切望する一括交付金は大きく削減され、219億円減の762億円となった。 査定による減額は間々あるとはいえ、一般会計の総額が10年連続で過去最大となったのとは対照的だ。来年度は、コロナ禍で大きく落ち込んだ県経済の再生と、新たな振興計画の一歩を踏み出す重要な年である。どうにも違和感が拭えない。

 沖縄関係予算は13年度以降3千億円台を維持してきた。辺野古埋め立ての承認を得る際、当時の安倍晋三首相が仲井真弘多知事に現行振計中の21年度までの3千億円台を約束したからである。

 首相周辺は「これ以上、義理を果たす必要はない」(20日付読売新聞朝刊)、官邸関係者は「玉城氏ではカネが取ってこられないというメッセージだ」(23日付朝日新聞朝刊)と話しているという。

 沖縄予算は新基地建設に反対する翁長雄志氏が知事に就任して以降、減額傾向にあった。同じく新基地反対の玉城デニー知事に対し約束の期限が切れた途端、大なたを振るうのは、予算そのものが政治的であることを物語る。

 沖縄振興は「償いの心」に基づき国の責務として始まった。沖振法には「沖縄の自主性尊重」の文言がある。

 まさに償いの心と自主性の尊重が沖縄振興の基本理念だが、安倍政権以降、理念からの逸脱が目立つ。

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 予算の変質を強く印象付けるのは、19年度に創設された沖縄振興特定事業推進費だ。県を通さず国が市町村に交付する仕組みで、来年度は概算要求通りの80億円。一括交付金が8年連続して減る中、推進費は拡大基調にある。

 政府は一括交付金を補完する予算だとするが、ならば一括交付金を増やせばいい。本紙の市町村長アンケートで、推進費を「有益」と答えたのは約6割にとどまった。「一部の自治体に偏っている」との声があるように、国のコントロールという意図が見え隠れする。

 新基地に反対する稲嶺進氏が名護市長を務めていた時、政府が市を通さずに直接、「久辺3区」へ交付金を配ったことがあった。

 「アメとムチ」の使い分けは財政規律をゆがめ、地域を分断する。予算で揺さぶりをかけるのは理不尽だ。

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 新基地問題が浮上してい以降、「沖縄を甘やかすな」との歴史や現状を無視した暴論が聞こえてくるようになった。安全保障政策で本当に甘えているのは誰なのか。

 基地が全て返還され、跡地利用が進んだ場合、その経済効果は年間9千億円を超えるという試算もある。

 沖縄予算は県民のための予算であり、沖縄の発展のための予算だ。どのように有効に使っていくか、振興の原点に立ち返る必要がある。