日本高校記録保持者に、全国王者-。ここ数年、沖縄から全国トップの成績を残す中高生が次々と誕生している。どんな幼少期を過ごし、どんなスポーツに取り組んできたのか。それぞれの特徴や持ち味など指導者の解説も交え、全国の舞台で活躍する中高生アスリートの強さの秘密に迫る。


陸上女子円盤投げ・那覇西高2年の友利晟弓(なるみ)

楽しみながら強さ追求

幼い頃からスポーツが好きだった友利さん。竹馬に乗り、笑顔でピース(提供)

 「楽しむ中の強さ」という言葉を胸に、陸上女子円盤投げの友利晟弓(なるみ)(17)=那覇西高2年=は汗を流してきた。初めて全国高校総体に出場して初優勝を飾るなど、「すごく濃い1年」を過ごせた2021年。自分自身だけでなく、共に過ごしてきた仲間が成長する姿が刺激になった。

 1年間で着実に記録を伸ばし続けてきた。1週間に1度のサーキットトレーニングでは、大型トラック用の巨大タイヤを持ち上げるなどして足腰を鍛えた。赤嶺永哲監督からは体の軸をぶらさず、円盤をきれいに飛ばすことを意識付けられた。昨年11月の秋季記録会では初めて46メートル台に乗せ、シーズン最終戦を終えた。

 22年を迎え、高校生活も残り約1年となる。昨年は全国総体優勝を経験し、「まだあと1年あることが信じられないぐらいの達成感」を実感できた。今年は楽しむことを第一に、全国総体連覇はもちろん、日本高校記録(54メートル00)の更新を目標に、「将来はオリンピックに出て、世界で戦いたい」と笑った。(運動部・我喜屋あかね)

軸の安定感 1年で成長 赤嶺永哲監督

那覇西の赤嶺永哲監督

 高校入学前から円盤に対して力を加えるうまさがあると感じていました。大きな大会でも気負いがなく、普段は温厚だけど試合では自分の世界に入り、空気を変えることができる。性格も円盤投げに向いています。

 一般的に沖縄の子が円盤を始めるのは中学から。小さい頃から遊びの中で親しんでいたことは大きいですね。昨年1年間で成長したのは体軸がぶれなくなったこと。軸がぶれるとターンで体が斜めになり、抜けてしまう。それが減りました。

 まずは県高校記録の49メートル96を抜くこと。現記録保持者の糸滿みやさんほど体が大きくないので、近づくためにはもう一つ武器を持たないといけない。やることはいっぱいありますが、その分伸びる可能性がいっぱいあるということです。

友利晟弓トリビア
  • 息抜きがてらにギターを弾くことが趣味。得意曲は長渕剛さんの「とんぼ」やスピッツなど。
  • 球技が得意。特に野球が好きで、幼稚園の頃から公園で父義久さんにノックを打ってもらって遊んでいた。小学生の時にはリフティングを100回以上できたという逸話も。
  • 大好物はカレー。海産物が苦手。ジュースやお菓子は控えている。
  • 生まれた時の体重は3600グラムほど。それでも4人きょうだいの中では一番小さかった。
  • 小学2年の時、体力テストのソフトボール投げで20メートル近く投げ、先生に驚かれた。同年代の平均は約8メートル。

バスケットボール・琉球ゴールデンキングスU15の平良宗龍(しゅうたつ)

抜群のハンドリング技術

ドリブルで攻め上がるさつき小時代の平良宗龍=2017年12月

 バスケットボールの若きファンタジスタが新たなステージに挑む。昨年、BリーグユースU15(中学)の2度の全国大会でMIP(最も印象的な選手)を連続受賞した琉球ゴールデンキングスU15の平良宗龍(しゅうたつ)(15)が強豪校の開志国際(新潟)への進学を決め、高校バスケで日本一を目指す。

 卓越したボールコントロール技術から繰り出す変幻自在のドリブルに正確なパスやシュートを兼ねそろえる万能型のポイントガードだ。

 全国でも注目を浴び、初の中卒Bリーガーを目標に掲げていた。だが、ユースでは異例のトップチームの練習に参加し、プロとの差を痛感。「体格面はもちろん、スリーポイントの精度など力に開きがあった」

 進路に悩む中、以前から勧誘されていた開志国際の練習に参加。身長2メートル超の選手や全員で走り込んで組織的に展開するバスケに引かれた。

 「ハンドリング技術は負けない。新しい環境で修業し、将来はBリーガー、NBAで活躍する選手になりたい」と新たな夢を描く。(運動部・新崎哲史)

強豪校での飛躍に期待 父・平良監司郎さん

父親の監司郎さん=沖縄市の泡瀬公民館

 兄の影響でバスケを始めた。幼少の頃から体は大きかったが、特別に能力が高かったわけではない。

 自分で目標を立ててボールハンドリングの技術を磨き、ドリブル、パス、シュートとも高いレベルでこなせるようになった。

 練習もそうだが勉強も効率よく学び、時間を無駄にしない。親元を離れて新潟での生活になるが「バスケと勉強の毎日。今と変わらない」とあっけらかんとしている。

 「いつかキングスの選手に」という思いも強い。高校で大きく成長することを期待している。

平良宗龍トリビア
  • ハンドリング技術が優れている。さつき小3年の時の試合で、年上の相手に何度もボールをカットされた。それ以来、両手ドリブルの基礎を1日100~200回こなす。「NBAやプロのスキル指導の動画は1度見ればだいたいできる」
  • 中3の1学期成績はオール5。放課後のほとんどはバスケの練習で疲労から家で復習する時間は少ない。授業で理解して、テスト前に詰め込む。「でも美術と音楽は少し苦手」
  • 高校では英語を頑張る。将来の夢はNBA選手。留学生も多い開志国際で「英会話を特訓したい」

ハンドボール・浦添中3年の石原直弥(15)

身体能力生かした跳躍

沢岻小5年の頃、高い位置からジャンプシュートを放つ石原直弥=浦添市(提供)

 浦添中3年の石原直弥(15)が、ハンドボール王国の中にあってひときわ輝いている。主に右サイドを得意とする。優れた身体能力を武器に高くジャンプしてのロングシュートは迫力十分。左利きという希少性からも将来を嘱望される。

 沢岻小4年で始め、すぐに頭角を現した。小学6年からはトップ選手が集まるナショナルトレーニングシステムに選ばれ、常に全国レベルを見据えてきた。

 自ら大きく飛躍したと感じるのは1年前の浦添市長杯。2年生で新チームの中心となった。決勝は31得点中14得点を奪って脚光を浴びた。チーム全員の団結と、得点という最後の仕上げの役割が融合して10年ぶり6度目の優勝に導いた。

 今春から高校に進み、新しいステージで全国制覇を目指す。この1年間で世界も視野に入れるようになった。「高校で活躍し、日本代表に入り、ヨーロッパでプレーしたい」。課題を持って臨む日々のトレーニングは夢へ向かう一歩だ。(運動部・溝井洋輔)

同世代は止められない 東江正作監督

男子沖縄選抜の東江正作監督

 点を取る嗅覚に優れている。身体能力の高さや体幹の強さ、バネにシュートスピードもあり、パスもできる。なおかつ貴重な左利き。中学生の国内トップクラスで、同じ年代の子にはなかなか止められない。

 雄斗(監督の次男で東京五輪代表)が中学生の時と比べても技術的には直弥の方がある。ただ世界を目指すには身長2メートル、体重100キロの選手の間を割って入らないといけない。

 雄斗でも世界で間を割れるようになったのはこの3~4年。直弥が絶えずフィジカルを鍛える意識を持ってパワーを付ければ世界でプレーするチャンスは十分にある。今は判断力を付けることを意識して少しずつ成長している。守備の意識も出てきた。守備ができれば攻撃がもっと楽しくなるよ、と伝えています。

石原直弥トリビア
  • 姉2人、弟1人の4人きょうだいの3番目として2600グラムほどで生まれた。幼い頃に箸や鉛筆は右利きに変えたが、球を投げるのは左のまま。
  • 小学校低学年で陸上と水泳を始め、友人に誘われて小学4年でハンドボールと出合う。体験初日でルールも分からないままゴールを決めて快感を覚えた。
  • 身長174センチ、体重64キロ、足は27.5センチ。将来の夢は以前は消防士で、今はハンドボール選手。
  • ドイツやデンマークなど海外で活躍することを目指し、よく海外の試合を見て接触プレーやシュートの打ち方を研究する。
  • 好きな食べ物はハンバーグで、どちらかというとデミグラスソースが好き。映画は外国のアクションをたまに見る。

重量挙げ女子55キロ級・本部高1年の比嘉成(せい)

2年後のパリ五輪を視野

3歳で重量挙げを始めた比嘉成(手前)と兄の力(提供)

 重量挙げ女子55キロ級の比嘉成(せい)(本部高1年)が見据えるのは2年後のパリ五輪だ。中学2年でアジアジュニアユースを制し、パリ五輪の強化指定選手に選出。昨春に父敏彦さんが監督を務める本部高に入学した。

 昨年5月の県総体はスナッチ80キロを挙げ、非公認ながら日本高校記録に届かせた。全国総体ではトータル3位だったが、11月の全日本選手権で雪辱を果たした。スナッチ84キロを挙げ、日本ジュニア、高校記録を更新。トータル178キロで高校生トップの4位に入った。記録樹立にも「練習で挙げていたので驚きはない」と冷静だ。「けがなく全ての公式戦に出場でき、楽しかった」と昨年を振り返る。

 年明けから大事な試合が続く。1月の九州選抜に2月の全日本ジュニア、3月は全国選抜に、出場が有力視される世界ジュニアがある。

 国際大会はパリ五輪を目指す比嘉にとって貴重な機会だ。「ここで結果を残したい」と意気込みを語り、スナッチ日本記録90キロの大台到達を今年の目標に掲げた。(運動部・比嘉大熙)

反動使える柔軟性強み 比嘉敏彦監督

本部高の比嘉敏彦監督=同校

 成は筋力がある選手ではないが、全体重を乗せて挙げることができます。それを可能にしているのは、反動を利用して一気に持ち上げる独特のフォームです。

 バーベルを直線的に持ち上げるのではなく、S字を描くように持ち上げる。バーベルの下に潜り込むことで、全体重を利用します。柔軟性があり、3歳から重量挙げをしているからこそなせる業だと思います。

 目標を設定したら、それをクリアするまで必死に練習し諦めない負けず嫌いな性格も、成績につながっています。

 まだ高校1年生なので、技術的、精神的にも成長できる余地がたくさんあり、今後も楽しみな選手です。

比嘉成トリビア
  • 趣味はお菓子作り。クッキーやケーキを作って家族に振る舞う。減量も考慮し、あまり砂糖を使わないようにしている。自分でレシピをアレンジするのも好き。
  • 練習中にかかる音楽では安室奈美恵さんの「HERO」が好き。リオ五輪のテーマソングでもあり、これを聞くとやる気が湧いてくる。
  • 休みの日は兄や弟たちとバレーボールなどをして過ごす。運動が好きで、重量挙げ以外の競技も遊びですることが多い。
  • 好きな教科は英語だが、テストで点数が高いのは数学。