今年は寅(とら)年だが、沖縄には昔から方言で「トゥラー」と呼ばれて親しまれてきた生き物がいる。日本で最も古く、縄文犬の一種とされる琉球犬のことだ。沖縄ではしま模様の虎毛が特徴の琉球犬を「トゥラー」と呼んでかわいがり、主にイノシシ猟の猟犬として活躍した。

伊礼幸子さんと「トゥラー」の琉君=12月19日、喜瀬武原の伊礼さん宅

琉球犬の「アカイン」=12月26日、喜瀬武原

伊礼幸子さんと「トゥラー」の琉君=12月19日、喜瀬武原の伊礼さん宅 琉球犬の「アカイン」=12月26日、喜瀬武原

■虎毛

 1995年に県の天然記念物にも指定された琉球犬。毛色で「赤トゥラー(赤虎毛)」、「黒トゥラー(黒虎毛)」、「白トゥラー(白虎毛)」と呼ばれる。体高は雄が50センチ前後、雌は46~52センチの中型犬だ。琉球犬は虎毛模様だけでなく、漢字の八を逆さにした形の耳や舌に斑紋があるのが特徴で、指(爪)が6本あるものも多い。

 恩納村喜瀬武原の伊礼一夫さん宅では2頭のトゥラーを飼育している。妻の幸子さん(57)は「りゅう(琉)は5歳の男の子。黒い縦じまの毛並みと耳がかっこいいでしょう。指も6本あります。賢く優秀な番犬ですよ」と目を細める。

 先史時代から狩猟犬として飼育されていた琉球犬は、イノシシの害から作物を守る大切な役目を担っていた。大事なトゥラーが死ぬと、人々が葬式も行った地域もあったという。

 昭和初期、名護市嘉陽でインビチ(やり突き)によるイノシシ猟の名人が数頭のトゥラーと猟をしていたが、その中のボス犬がイノシシに鋭い牙でえぐられて死んでしまった。そのトゥラーの葬儀には村中の人々が参加したというエピソードも残っている。

■赤犬

 一方、狩猟犬ではない「アカイン(赤犬)」の琉球犬もいる。今まで20頭のアカインを育てた喜瀬武原の外間勝嘉さん(63)は「かつて、アカインは家畜として飼育されていた。現在4頭おり、母親で6歳のラブが、7代先の先祖の毛並みを持つ焦げ茶色の1歳のチビを生んだ。他のきょうだい犬と色が違い、いわゆる先祖返りの子どもです」と語る。

 どの犬も全て琉球犬の特徴の耳や6本の指があり、チビにもその遺伝子が継がれているという。外間さんは「琉球犬は生きた文化遺産。今年は寅年だが、沖縄にも『トゥラー』が存在することを知ってほしいですね」と話した。(玉城学通信員)