東京商工リサーチ沖縄支店は5日までに、2020年度の県内企業利益ランキングを発表した。当期純利益が2千万円以上の企業は、前年度から22社減の1022社、利益総額は14・1%減の1294億3715万円と2年連続で前年を下回った。大型工事を取り込んだ建設業がけん引したが、新型コロナウイルスの影響でホテルや航空会社といった観光関連企業が大きく落ち込んだ。建設も民間工事の受注難や資材価格の高騰で利益が上げにくい傾向があり、先行きは厳しいとみている。

■純利益総額は2年連続で減る

 1社当たりの平均利益額は前年度比12・2%減の1億2665万円だった。

 社数を業種別にみると、建設が39社増加の411社と最も多く、全体の4割を占めた。米軍基地関連や学校の増改築、市庁舎建て替えといった堅調な公共工事に加え、コロナ前からのホテルなどの民間の大型工事が活発だった。08年度の集計開始以来、初めて400社を超えた。

 2位の「その他サービス」には、建築設計業や測量業、建設機械賃貸、産業廃棄物収集運搬・処理業などもランクイン。建設との関連も深いことからその恩恵を受けて伸ばしたとみられる。

■好調だった建設も厳しい先行き

 利益総額が最も大きかったのも建設。5年連続で首位となった。総額は9・7%増の304億8951万円で全体の23・6%を占めた。2位は電気、石油、LPガスなどのエネルギーで9・3%増の120億6211万円と続いた。3位は通信・情報だった。一方、ホテルは、コロナ禍で苦戦した。昨年は14社がランクインしていたが、今年のランクインは1社にとどまった。利益総額も96・3%減と大幅に減り、9493万円だった。

 同支店の担当者は、一部の企業の決算には新型コロナ対策の雇用調整助成金も計上されていると指摘。「特例制度がいつまで続くかにもよるが、資材や原油の高騰などの影響もある。傾向として、利益を上げにくい環境が続くのではないか」と分析した。

■コロナ禍で企業の順位に明暗

 純利益の企業別ランキングでは、新型コロナウイルスの影響で明暗が分かれた。トップ10企業で増益となったのは4社。上位10企業の利益総額も昨年を下回り、長期化するコロナ禍が幅広い業種へ影響を与えていることがうかがえた。

 打撃を受けた観光業では、トップ10常連の日本トランスオーシャン航空(昨年4位)や那覇空港ビルディング(同8位)がランク外となった一方、昨年12位だった沖縄ヤマト運輸が5位へ躍進。巣ごもり需要など新たなニーズで業績を伸ばした。

 1位は沖縄セルラー電話で3年連続の首位。「auでんき」や海底ケーブル事業が寄与して高収益を維持した。子会社の吸収合併による「抱き合わせ株式消滅差損」などの特別損失から前年度比19・4%減の80億7千万円だった。

 2位は沖縄電力。原油・石油価格が低水準で推移したことなどから23・0%増の69億5300万円となった。

 3位のサンエーは20・1%減の59億8400万円。時短営業や外出自粛で利益率の高い衣料品や外食部門が落ち込んだ。

 4位は沖縄銀行。企業の倒産や業績悪化に備える与信コストの増加で7・8%減の45億2200万円だった。

 5位は沖縄ヤマト運輸で、ロボットによる作業自動化などで生産性が向上し21・5%増の20億369万円となった。

 6位のりゅうせきは前年の抱き合わせ株式消滅差益の反動で70・7%の減益だった。7位の國場組は2年ぶりのベスト10入り。8位は沖縄土地住宅、9位琉球銀行、10位アメリカンエンジニアコーポレイションと続いた。

 ベスト10企業の利益総額は365億245万円で、全体に占める構成比は6・0ポイント低下の34・2%だった。