「子どもファースト」の行政へ向けて、さらに議論を深める必要がある。

 政府が閣議決定した「こども家庭庁」の基本方針は、子ども関連政策の司令塔となる新たな行政組織の具体像を定めたものだ。

 首相直属機関と位置付け、内閣府の外局とする。他省庁への「勧告権」を持つ閣僚を置くことなどが柱となる。2023年度のできる限り早期の創設を目指し、通常国会に関連法案を提出する。

 いじめや不登校、虐待、自殺、貧困、待機児童、障がい児教育など子どもに関わる課題は多岐にわたる。

 問題は複雑・深刻化しており、より迅速で細やかな対応が求められている。

 子ども政策を一元的に担う組織の新設は、政治の重要課題に位置付けられた表れであり歓迎したい。ただ、抜本的な組織改革とは言い難い。

 新たな組織には、厚生労働省の児童虐待防止や保育所を担う部署、内閣府の少子化や子どもの貧困などの対策を担当する部署が移される。

 一方で教育行政は引き続き文部科学省が担う。議論の当初は幼稚園や小中学校の権限ごと移す大規模再編案もあったが、文科省や自民党内の慎重論もあり後退した。結果として保育所と幼稚園の所管は異なったままだ。

 担当閣僚に勧告権を与えるのは「縦割り行政」の弊害を払拭(ふっしょく)する狙いがあるのだろう。

 他省庁に政策の是正を勧告し、報告を求める権限を持たせる。対応が不十分な場合は首相に意見具申ができるという。だが勧告に強制力はなく実効性は見通せない。

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 新たな組織が政策遂行力を高められるか、鍵を握るのは十分な予算と人員の確保だ。

 政府は、厚労省と内閣府から移管される人員を大幅に超える300人規模での発足を目指している。NPO法人などの民間人材らを積極的に登用する考えだ。

 困難を抱える子どもたちの支援は民間が先行している面もある。制度からこぼれ落ちる子が出ないように政策を充実させてほしい。

 不安を感じるのは予算面だ。基本方針は安定財源の確保に努めるとしているが具体性に欠ける。

 コロナ禍で子どもたちを取り巻く環境は厳しくなり支援の強化は待ったなしだ。

 日本は子育てなどを公費で支援する家族関係社会支出の対国内総生産比が、英国などに比べて低い。政府の子ども関連政策の有識者会議も積極的な財源投入を求めている。

 岸田文雄首相は具体的な財源の目標を示すべきだ。

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 組織名は当初「こども庁」だった。こども家庭庁になったのは自民党などからの「子どもの育ちは家庭が基盤」との意見を踏まえたものだ。

 家庭の役割が強調されることで、社会全体で子どもを支えるとの認識が薄らぎはしないか気に掛かる。

 有識者会議の報告書は全ての子ども政策の基盤となる「こども基本法(仮称)」制定の検討を訴えている。子どもの権利保障を前に進めるため踏み込んだ議論を求めたい。