辺戸岬(右奥)を見下ろすようにそびえ立つ辺戸御嶽(安須森)=2021年12月、国頭村辺戸(小型無人機で金城健太撮影)

[ジオサイト紀行 島々の多様性](1)尾方隆幸 琉球大准教授(地球科学)

 沖縄本島最北端の辺戸岬(国頭村)には2種類の石灰岩が露出している。茶色に見える岩と灰色に見える岩の違いは何か。そこから地球の営みが見えてくる-。

 琉球弧の島々には、地球の活動の痕跡がよく観察できる場所「ジオサイト」が数多くある。写真企画「ジオサイト紀行」は毎月1回、特徴的な自然景観を取り上げ、尾方隆幸・琉球大学准教授(地球科学)が解説する。

2種類の石灰岩が見られる辺戸岬。後方に辺戸御嶽(安須森)がそびえる=2021年12月、国頭村辺戸(金城健太撮影)

 沖縄本島最北端の辺戸岬と、岬を見下ろすようにそびえる辺戸御嶽(安須森(あすむい))は、沖縄の人々になじみ深い石灰岩でできている。岬の園地を歩いていると、雰囲気の異なる二つのタイプの岩が露出していることが分かる。

 これらはいずれも石灰岩だが、できた時代と場所が決定的に違う。ごつごつした岩は、沖縄では琉球石灰岩と呼ばれていて、今から十数万年~数十万年前という地質的には新しい時代に琉球列島でつくられた。一方、のっぺりした岩は、日本列島や琉球列島ができるより2億年以上も昔に、遠く離れた海洋プレートでできたもので、プレートの運動によって長い時間をかけて移動し、海溝での沈み込みに伴って大陸プレートに付加されたという歴史を持っている。

 辺戸岬から辺戸御嶽にかけての一帯は、本州の関東地方から、四国・九州を経て沖縄まで続く地質構造の大きな境界の一部に当たる。その境界は「仏像構造線」と呼ばれ、構造線の両側は「四万十帯」「秩父帯」と呼ばれている。命名された「仏像」と「四万十」は四国地方の地名、「秩父」は関東地方の地名で、それぞれ詳しい研究が行われた土地に由来する。

辺戸岬には2種類の石灰岩が見られる。岩の表面が茶色に見える方が新しく、灰色に見える方が古い

 この地質的な境界は、四万十帯の地層・岩石の上に秩父帯の地層・岩石が乗り上げた構造として認められる。これは圧縮の力を受ける場に生まれる逆断層の一種だ。仏像構造線に沿うように縁取る崖には、乗り上げた側の秩父帯の岩石(石灰岩)が露出している。

 崖では岩盤が風化し、盛んに落石を発生させる。崖の下には落下した巨礫(れき)が重なり、物理的に安定する角度(32-35度の安息角と呼ばれる角度)の特徴的な斜面ができている。

 辺戸岬は、いわゆる「端っこの観光地」として県外や国外からの訪問者も多く、辺戸御嶽は沖縄有数の聖域として県民に広く知られる。しかし辺戸一帯の魅力はそれだけではない。本州から連続する地質的なつながりや、数億年に及ぶ地球の歴史に思いをはせることのできる「ジオサイト」でもあるのだ。

地質構造の境界「仏像構造線」

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 地球の営みが実感できる自然景観を取り上げ、成り立ちや仕組み、地球科学の観点から見た多様性(ジオダイバーシティ)を毎月、紹介していきます。