よく県外の人に沖縄タイム「ズ」、と間違えられる。世界的に有名なニューヨークタイム「ズ」は濁点が付く。無理もない。ただ、那覇地検の検事が公文書で間違えたのには少しがっかりした

▼昨年、勾留中の山城博治議長にインタビューした。といっても面会はできない。接見の弁護士に書面で質問を預け、回答を得ることを考え付いた

▼タイム「ズ」などの紙面を見た検事は弁護士に矛先を向け、質問書を送っていた。担当は誰か、接見禁止なのになぜ取り次いだのか-。どこが問題なのかと聞かれても、「考えを聞きたい」と言うだけ。計4回も送るという執拗(しつよう)さだけが際立った

▼接見禁止は本来、証拠隠滅を防ぐためにある。山城議長は事件について「法廷の中で明らかにしていく」と答えただけ。口裏合わせの事実がないことは、紙面が証明している

▼検事が問題視したのは、県民の団結を訴える内容の方だっただろう。聞く者の心を揺さぶる山城議長の言葉を封じようとした。事件関係者との接触禁止という広すぎる保釈条件にも、抗議参加を防ぐ狙いが透ける

▼山城議長の勾留中、手紙を集めて意見広告の形で新聞に載せ、届けた人たちがいた。権力が築く壁を、市民は創意工夫で乗り越える。1人を隔離しても、大勢が続く。山城議長不在の5カ月は、そのことを示した。(阿部岳