沖縄県内では新型コロナウイルスの感染拡大で病床が埋まり、緊急事態宣言の基準に達しつつある。しかし、県は宣言の国への要請に慎重な姿勢を見せている。オミクロン株の感染状況が従来とは異なり、「第5波」と比べると重症病床の運用に余裕があるなど、宣言の基準と実情に差があるからだ。
政府は警戒レベル判断指標で「病床使用率」と「重症者用病床使用率」が50%を超え、「レベル3(感染まん延期)」に入れば、緊急事態宣言を出すなどの強い対策が必要としている。
加えて県は、病床使用率が50%に達する前でも、「直近1週間の人口10万人当たりの新規感染者数」が「レベル3」になれば宣言を検討する。
人口10万人当たりの新規感染者数は、12日時点で598・27人。すでに「レベル4(非常事態)」に達している。12日には重症者用病床使用率が51・4%となり「レベル3」に入った。重症用以外の病床使用率も47・1%に上り、「レベル3」目前だ。
高齢者施設内での集団感染も発生しており、徐々に高齢者の感染も増えてきている。高齢者は重症化リスクが高く入院治療が必要になる人も多い。感染拡大が進んだ場合には、医療逼迫に直結する恐れがある。医療従事者にも感染が広がり、欠勤者も増加が続く。
しかし、県の糸数公医療技監は緊急事態宣言の要請について「具体的な検討には入っていない」と話す。重症用病床の使用率が50%を超えているものの、実際に重症病床に入っているのはすべて中等症以下の患者。人工心肺装置ECMO(エクモ)での治療が必要などの重症者はおらず、「第5波」と比べると病床の運用には余裕がある。
また、県内のオミクロン株感染者の大半は若者。症状が軽く入院まで至らないケースが多く、県はその傾向が続く可能性があるとみている。糸数技監は「数字と実態のギャップをどう評価するかの議論が必要」とし、宣言が妥当な措置なのか「判断が難しい」と説明した。