4カ月で3回目となる国会演説は、今回も具体的内容に乏しかった。

 岸田文雄首相は17日召集された通常国会で、就任後初の施政方針演説を行った。過去2回の所信表明演説同様、新型コロナウイルス対策と「新しい資本主義」に力点を置いた。コロナ対策では、水際対策強化や医療関係者、高齢者へのワクチンの3回目接種を加速する方針も示した。

 国内では新たな変異株「オミクロン株」が急拡大を続けている。オミクロン株は重症化率が低いとされるが、感染者数が激増する中でどのように感染を抑え込み、医療提供体制を維持していくかは眼前の課題だ。だが演説では対策の具体的な期限には踏み込まず、切迫感が感じられない。

 そもそもオミクロン株は、日本の検疫が適用されない在日米軍の兵士から沖縄などに感染が拡大したとされている。それに対し首相は、演説の中で「地位協定に基づく日米合同委員会において、しっかり議論していく」と述べるにとどめた。

 これで県民、国民の不安が払拭(ふっしょく)されるのかは大いに疑問だ。

 「新しい資本主義」についても、首相は「成長と分配の好循環」を繰り返すだけだった。特に分配戦略については、春闘での「賃上げが実現することを期待する」として、ほぼ企業側の対応に丸投げした形を取っている。最低賃金を全国加重平均で千円以上にするとの目標も「できる限り早期に」としか言及しなかった。

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 具体策に乏しいだけでなく、首相は多くの重要テーマについて語らなかった。

 このうち日本学術会議会員の任命拒否を巡っては、首相は国会開会前の14日に「もう結論は出ている」と語り、幕引きを図っている。

 森友・加計学園問題にも触れなかった。この問題は、いまだ政権側から「お友達」に便宜が図られた可能性について十分な説明や解明がなされたとは言えない状態だ。

 また、与党の元衆院議員が貸金業法違反で在宅起訴されるなど、このところ相次ぐ「政治とカネ」の問題についても演説の中で取り上げなかった。

 「核兵器のない世界」を目指すと強調、各国の政治リーダーらを集めた国際賢人会議設立をうたった。一方で被ばく者が切望してやまない核兵器禁止条約への参加には触れなかった。これでは、首相の本気度が問われることになるだろう。

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 演説では、沖縄が今年復帰50周年に当たるとして「強い沖縄経済をつくるための取り組みを進める」と述べた。基地問題には「沖縄の皆さんの心に寄り添い」「辺野古への移設工事を進める」と従来の政府見解を繰り返した。

 しかし、沖縄関係予算は来年度大幅な減額となる見込みだ。また辺野古新基地を巡っては、県が指摘する軟弱地盤の問題をどう解消するのか、明確な見通しが立っているとは言えない。

 こうした「矛盾」も含め、首相は今後国会で、納得いく説明をする必要がある。