仕事や家族・友人関係、学業などが思うようにいかなくなり、絶望感を募らせ、無差別に人々を襲いかかる事件が相次いでいる。

 不満の矛先を他人に向けたり、一方的に巻き込もうとしたりする身勝手さには強い憤りを覚える。

 受験シーズンが本格化した中で衝撃的だったのは、大学入学共通テストの初日、東京都内の東大前の歩道で受験生ら3人が刺された事件だ。

 殺人未遂容疑で逮捕されたのは名古屋市の私立高校2年の少年。逮捕時に「勉強がうまくいかず、事件を起こして死のうと思った。医者になるため東大を目指していたが、成績が1年前から振るわなくなり自信をなくした」と話していたという。

 勉強がうまくいかないことは誰にでもあり得る。自信をなくしてしまうのも分かる。だが、他者を巻き添えにして自らも命を絶とうと考えるのはあまりにも浅はかだ。

 少年が身柄を確保された時には凶器とみられる包丁やのこぎり、可燃性の液体入りペットボトルなどを持っていた。周到に用意していたとみられる。

 少年が通う学校がコメントしたように「孤立感にさいなまれて自分しか見えていない状況」だったとうかがえる。

 なぜ少年がそこまで追い込まれていたのか、丁寧に聞き取る必要がある。

 特殊な人が引き起こした特殊な事件だと片付けてはならない。なぜ事件に走ったのか解明し、社会全体で受け止めるべきだ。

■    ■

 昨年12月に発生した大阪・北新地のビル放火殺人事件も、孤立を深めた容疑者の犯行とされる。

 ビル4階の心療内科クリニックにガソリンをまき放火し25人の命が奪われた。犠牲者の無念を思うと言葉を失う。

 年末に死亡した61歳の容疑者は生活が困窮し、交友関係は乏しかった。犯行を思いとどまらせる絆もなく、大勢を巻き込む「拡大自殺」を図ったとみられている。

 昨年8月に都内を走行中の小田急線の電車内で、乗客10人が36歳の男に切り付けられた。10月には京王線特急内で24歳の男が乗客を刺し、ライターオイルをまき火を付ける事件も起きた。

 「自分はくそみたいな人生」「仕事で失敗し友人関係もうまくいかない。人を殺して死刑になりたかった」

 逮捕後の調べに対する両容疑者の言葉からは、自暴自棄に陥っている様子が伝わる。

■    ■

 法務総合研究所が2013年にまとめた「無差別殺傷事犯に関する研究」によると、調査対象となった52人の主な動機は「自己の境遇や現状に対する不満」が4割を超え、最も多かった。

 犯行時には交友関係や家族関係が劣悪だった人がほとんどだった。

 現在、長引くコロナ禍で居場所をなくすなど孤立を深めている人は少なくない。

 政府は昨年末、深刻化する孤独・孤立問題に対応するために初めての重点計画を決定した。相談体制の拡充と併せ、昨年からの事件の背景なども分析してもらいたい。