名護市長選は政府・与党が支援する現職の渡具知武豊氏が再選を果たした。

 5千票の差をつけ、「オール沖縄」勢力が推す新人で前市議の岸本洋平氏を退けた。

 辺野古への新基地建設が浮上して以降、7度目の市長選だ。海域に土砂が投入されてからは初となる。

 辺野古側の工事は進み、今から止めるのは難しい、との受け止めが有権者に広がっていたのではないか。「それならば国から交付金を引き出した方がいい」との現実的な考え方が浸透したと見て取れる結果だ。

 さらにコロナ禍で県経済は大きな打撃を受け地域にも閉(へい)塞(そく)感が漂っている。政権とのパイプをバックにした候補に期待票が集まったのだろう。

 新基地建設の是非という明確な争点がありながら、論戦の争点にはならなかった。岸本氏が阻止を前面に訴えたのに対し、渡具知氏が徹底して語らない戦術を取ったためだ。

 代わりに語ったのは「暮らし」だ。学校給食費・保育料・子ども医療費の無償化など1期目の実績を強調した。

 出費の多い子育て世帯にとって、保育料などの無償化が家計への大きな支援であるのは間違いない。有権者は足元の課題を重視し「市政の継続」を選択したのである。

 ただ、無償化政策の財源である再編交付金は期限付きだ。交付金頼みの振興策が国への依存度を強め、自発的な地域づくりにつながりにくいことは心に留める必要がある。

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 岸本氏は元市長の岸本建男氏の長男で40代の若さが強みだった。父親を知る人たちからの期待感もあった。

 だが、若い世代の心に響く政策を提案し有権者を引き寄せられなかった。新型コロナウイルス「オミクロン株」の感染拡大が米軍由来だとして基地のリスクを訴えたが届かなかった。

 前回市長選の後、この時も渡具知氏は辺野古の是非を語らなかったにもかかわらず、当時の菅義偉官房長官は「選挙は結果が全て」と主張した。

 有権者を対象にした本紙世論調査では、回答者の6割超が移設に否定的だった。渡具知氏の支持者も「どちらかといえば」を含め3人に1人は反対している。

 この四半世紀、辺野古を巡り名護市民は「分断」されてきた。深刻な分断を修復するためにも誠実な話し合いの必要性を今日の結果は示している。政府は玉城デニー知事が求める話し合いに応じてもらいたい。

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 今年はさらに5市長選が予定され、秋には知事選が控える「選挙イヤー」だ。

 きのうは南城市長選の投開票もあり、自公の推す前職の古謝景春氏が当選した。自公は2勝し県政奪還へ弾みをつけた。

 逆にオール沖縄は2敗で大きな痛手となった。昨年秋の衆院選でも新基地を抱える3区で敗れており、オール沖縄の退潮と玉城知事の求心力の低下を印象付けた。

 知事選に向けて態勢の立て直しが迫られている。