名護市長選で現職の渡具知武豊氏が再選されたことで、米軍再編交付金の問題点が改めてクローズアップされている。

 選挙の際、新基地建設の是非を語らず、争点化しないこと。米軍再編交付金を活用し、子育て支援など市民生活に直結した事業を進めること。

 この2点をセットにした戦術で渡具知陣営は選挙イヤーの初戦を制した。

 米軍再編交付金は、2007年に成立した米軍再編特措法に基づいて制度化された。

 米軍再編に伴って基地を受け入れる市町村に対して、防衛大臣が対象市町村を指定し、進捗(しんちょく)状況に応じて交付額を決定する仕組み。食い逃げは許さない、との防衛省の発想から生まれたものだ。

 だが、この制度には憲法や地方自治の観点から看過できない重大な問題点が潜んでいる。

 政府は選挙に勝とうが負けようが、結果に関わりなく埋め立て事業を強行してきた。 工事を継続しているのだから、反対の市長が誕生しても交付金を継続してもいいはずだ。そうでなければ工事そのものを中断するべきである。

 だが、反対の市長が誕生するや否や、たちどころに交付金が打ち切られた。

 政府の政策に反対すれば公的資金が配分されず兵糧攻めに遭い、理解を示したり黙認したりすれば、たんまりカネが落ちる。

 自治権が大幅に制約されるこの制度は、憲法上も疑問が付きまとう。

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 長い間、辺野古に通い続け、現場の声を聞いてきた熊本博之明星大教授は、ポータルサイト・シノドスの中で、このような状況を「報奨金化した社会」だと表現する。

 当初、政府は沖縄側の理解を得るため「補償金的な振興事業」を進めてきた。

 その後、基地受け入れと振興事業が結び付けられ、非協力的自治体には米軍再編交付金を交付しないという「報奨金化した振興事業」に変わったのだという。

 こうした形で公的資金が投入され続ければ、全国世論が変化し、「こんなにカネをもらっているのだから受け入れるのは当然」との空気が広がる恐れがある。

 米中対立の中で、世論は政府の対応を批判するのではなく、沖縄の対応を「わがまま」だと批判しがちなだけに、なおさらである。

 懸念されるのは、県内において分断と対立が進むことだ。

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 県民は、復帰50年のその半分の歳月、25年余にわたって辺野古問題に翻弄(ほんろう)されてきた。

 基地の過重負担を軽減するという当初の目的は、いつの間にか、基地を受け入れるかどうかの問題にすり替わった。

 米軍普天間飛行場の一日も早い危険性除去という目的は、実態を失い、当初の普天間合意にはなかった辺野古の新基地建設に置き換わってしまった。  

 復帰50年の今年は、こうした問題を、県内においても国会においても、根本的に問い直す機会にすべきである。