沖縄美ら島財団(本部町)と東京大学大気海洋研究所(千葉県)の研究グループは28日、ホホジロザメの出産前の「授乳」の仕組みを明らかにした。子宮内に脂質を含む液体(子宮ミルク)を出して赤ちゃんを育てる際、子宮表面の細胞が破裂することでミルクが供給されていると判明。哺乳類のミルク分泌の仕組みと大きく異なり、財団は「謎が多い本種の繁殖メカニズムを解明した貴重な成果だ」としている。

 ホホジロザメは、子が母親の胎内である程度まで育って生まれる胎生。妊娠初期に子宮内でミルクを分泌し、赤ちゃんを育てる。

 子宮ミルクはサメ・エイ類が、哺乳類と似た授乳の能力を進化させた例として知られていたが、両者のミルク分泌の仕組みがどのくらい似ているのかは明らかにされていなかった。

 財団は2014年、読谷村沖の定置網で死んでいた妊娠初期の雌を解剖し、子宮の標本を調査。壁の断面を顕微鏡で観察した。

 その結果、子宮の内面の細胞が破裂することで、蓄えていたミルクが出ると分かった。破裂した細胞は、新たな細胞に置き換わることも分かった。

 乳房の乳腺で母乳をつくる一般的な哺乳類は、脂質を含んだ細胞の一部がちぎれ、その部分が集まることでミルクになる。

 ホホジロザメの分泌方法は、大量のミルクを供給するのに役立っていると考えられるという。

 同財団総合研究センター動物研究室の冨田武照研究員は「サメの『授乳』の仕組みが明らかにできた。早産したサメの赤ちゃんを救命する装置の開発などで、子宮の役割を知ることは重要だ」と語った。

 研究成果は29日、米国際学術誌で公開された。