[沖縄 稼ぐ力 生産性向上の現場](8)
「メロンが安すぎる」。宮古島パラダイスプランの西里長治社長(54)が、メロン農家が稼げる仕組みづくりに取り組んだきっかけだ。同社が運営し、宮古島の特産品を取り扱う「島の駅みやこ」の店頭に並ぶ宮古島産メロンは、5年前は1玉1千~1500円で取り扱われていた。
宮古島は、石灰岩が基盤となっている地層で、土壌は水はけがよく、水質はミネラルを豊富に含んでいる。そのため、果肉が詰まっていて、他県と比べて味と香りの濃い特徴のあるメロンができる。
「宮古島らしさとメロンの高級品のイメージを掛け合わせれば、市場は広がる」。西里社長はそう見込み、2017年に宮古島産メロンのブランディング事業に着手した。
メロン農家14戸と共に生産部会を結成。栽培や販売方法の勉強会を重ねた。糖度14度以上で、形の良いものを「宮古島メロン」と命名。サトウキビの搾りかすを畑に混ぜることで、土が軟らかくなり、広範囲に根を張れるため、メロンの栄養価が上がる独自の栽培方法も生み出した。
島の駅みやこでは、贈答用として、専用の販売コーナーを設け、ポップなどでPR。品質が認められ、18年ごろから販売が増え、価格も上がった。昨年12月~今年1月の書き入れ時の売り上げはコロナ禍にもかかわらず、前年同期比1・5倍の約3千万円。単価は5年前の2倍になった。
西里社長は島外への販路も開拓。高級品として売り込むため、百貨店に狙いを定めた。西里社長は「最近の百貨店は、地域の特色ある素材を求めている。マンゴーではない宮古島産の高級食材として売れるはず」。
宮古島の新しい高級食材という新規性と品質が受け、昨年5月にはデパートリウボウのスイーツ専門店「GOLDWELL」が新商品「宮古島メロン キセキノチーズケーキ」として販売を始めた。
リウボウとの商談をきっかけに東京・銀座にある高級フルーツ店の千疋屋での販売も決まった。昨年4月に1週間の期間限定で、宮古島メロンのスイーツを販売。3千円を超えるパフェも含め、連日売り切れるほどの好評を得た。西里社長は「全国でも品質を認めてもらえた」と語る。生産部会の盛島邦光副部会長(47)の収入は5年前から倍増した。「贈答用の箱も農家が作り、売り方にもこだわっている」とする。
今後は、傷が付くなどで高級フルーツとして売り出せなかったメロンを素材にしたスイーツの開発を目指す。西里社長は「加工品販売で、農家の収入をさらに増やせる」と展望する。
(政経部・又吉朝香)=木~土曜に掲載します