小学校の敷地内などの公的施設に、放課後児童クラブ(学童保育)を整備する県の事業が遅れている。
沖縄21世紀ビジョン基本計画で2012~21年度の10年間に計100カ所の整備目標を掲げていたものの整備数は現状で58カ所。目標には遠く及ばない。
県内の学童保育の公的施設活用率は35・7%と全国平均の8割とは大きな開きがある。整備を積極的に進めるべきだ。
県内の学童は約9割が「民立民営」で、民間住宅やアパートなど賃貸物件を使っているところが少なくない。
月額利用料は平均約9400円と全国水準よりも高く、「公立公営」や「公立民営」で学校の余裕教室を使うことの多い他県と比べると保護者の負担が重い。
設備面もトイレが男女別でなかったり、外遊びできる場が遠かったり課題を抱える。
県の事業は、一括交付金を使って小学校敷地内などに学童施設を整備する市町村を支援するものだ。
那覇市や南城市、豊見城市などでは事業の活用が進んだ。だが、自治体によっては既存の民間学童への影響を懸念して慎重になるなど温度差がある。学校側も余裕教室がない場合や、あっても施設管理面で理解を得にくい場合があるという。
ただ、民業圧迫にならないよう民間に運営を任せたり、学校に負担が掛からないよう行政が調整するなど工夫の余地はあるはずだ。子どもと親の負担軽減を優先してもらいたい。
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学童保育は共働きやひとり親世帯の保護者にとって、放課後や夏休みなどの間、安心して子どもを預けられる心強い存在だ。
子どもにとっても集団遊びや体験活動などを通して成長できる育ちの場である。
県などによると、学童保育の数はこの10年で2倍近くに増え、利用児童数も1万1800人から2万3080人に増えた。
ただ、定員超過などで利用できなかった子どもは800人近くいる。
さらに実際には保育を必要としていながら、利用料の高さがネックとなって諦める家庭も少なくないとみられる。
利用すべき家庭が経済的な事情で利用できず、子どもが1人で過ごすような状況は改善しなければならない。
利用料の軽減に向けて公的施設活用を促すとともに、ひとり親世帯などへの減免措置も拡充してもらいたい。
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県内の学童保育で民立民営の割合が高いのは、戦後、米軍統治下に置かれ、本土並みの児童福祉行政が立ち遅れたからだ。沖縄振興開発計画においても子育て政策は後回しにされてきた。
復帰50年を迎えようとしてなお子どもたちの「放課後保障」が進んでいないことを国や県、市町村は重く受け止める必要がある。
県は一括交付金の削減を受け、補助できない可能性があると市町村に通知したが事業を停滞させてはならない。市町村も既存の施設の活用に知恵を絞ってもらいたい。