沖縄本島などに生息するナナホシキンカメムシの「求愛ダンス」の詳細を、森林総合研究所などの研究チームが6日までに発表した。視覚や触覚、味覚などを駆使してあの手この手で求愛するユニークな行動に、全国から注目が集まった。その研究のきっかけとなったのは、現在東村に住む県内のチョウ類研究者、宮城秋乃さん(43)だった。(北部報道部・西倉悟朗)
2013年4月、沖縄県うるま市立海の文化資料館の昆虫研究員だった宮城さんが、同市浜比嘉島で昆虫の調査をしていた時、ナナホシキンカメムシ2匹が独特な動きをしているのを発見。しばらく観察を続けると、2匹は交尾した。
宮城さんは「昆虫が触角などを使って求愛行動をするのは多く見てきたが、あそこまで複雑な動きは見たことがなかった。まるで交尾を申し込むようなおじぎや、ダンスのような動きをした。人間を思わせるような動きで、興味深かった」と振り返る。
学術誌「月刊むし」の14年2月号には、宮城さんのレポートが掲載された。同年、この求愛行動に興味を持った同研究所の向井裕美主任研究員が宮城さんに連絡。浜比嘉島で実際に行動を確認し、今回の研究が動きだした。
その後、向井研究員らは浜比嘉島などから18ペアを採取して室内で行動を観察。雄が雌の周囲でダンスをするような一連の動きの後、18ペアのうち13ペアが交尾に至った。視覚や触覚、味覚に近い化学的な感覚による複数のシグナルを使ってコミュニケーションをしているとみられる。
向井研究員は、昆虫は神経系のつくりが比較的単純なため、複数のシグナルが神経にどう反応するか、より深い研究につながる可能性があるとし、「脊椎動物の研究では未解明な部分も分かってくるかもしれない」と期待する。
宮城さんは「昆虫の生態には未解明なことがとても多く、奥が深い」と笑顔を見せる。一方で、米軍基地やノネコの問題など、人が原因となり自然環境が壊されていると指摘。「自然破壊が進み未解明なままにならないよう、新しい知見を発見することで沖縄の自然保護につなげていきたい」と力強く話した。
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