[反ヘイト]
おことわり 差別の実態を共有してなくすため、差別表現が含まれた写真を掲載しています。
市民グループ「沖縄カウンターズ」は21日、沖縄や外国ルーツの人々に対するヘイトスピーチの深刻さを可視化する展示を那覇市内で開いた。インターネットや沖縄の街頭で実際に吐かれた差別扇動の言葉を191枚の紙に印刷し、壁一面に貼った。
県はヘイトスピーチ対策条例の制定を進めるが罰則規定はなく、沖縄を標的にした言動も対象にしない考え。メンバーの女性は「実効性ある条例の制定に向けて諦めずに行動する。それぞれの場から声を上げてほしい」と望んだ。
■ここまでひどいとは…
県ヘイトスピーチ対策条例の素案が公開され、実効性のない中身が判明してから2週間足らず。市民グループ「沖縄カウンターズ」は被害の深刻さを伝える展示を急いで用意し、21日に実現した。差別扇動の量と醜悪さが可視化され、涙を流すメンバーもいた。
「自分は慣れていると思っていたのに、急にきつくなって、涙が止まらなくなってしまって」。メンバーの女性は、自らも関わって完成させた展示に突然打ちのめされた。「私だけでなく、誰もが傷つく可能性がある。こんな差別が表現の自由であるはずがない」と語った。
展示は一日限定で、玉城デニー知事をはじめ県関係者らを招待した。県関係は誰も訪れなかったが、玉城健一郎県議が来場。展示を見て「心がナイフで切り裂かれるようだ」と語り、「刑事罰や氏名公表などのペナルティーが抑止になる。歴史的に差別を経験してきた沖縄県として踏み込む必要がある」と条例の規制を強めることを提案した。
那覇市の長堂登志子さん(71)は展示を見て鳥肌が立ったといい、腕をさすった。「ここまでひどいとは思わなかった。ヘイトは駄目だと行政がはっきり示す必要がある」と指摘した。県の検討委員会の委員を務める有識者も個人として訪れた。
カウンターズのメンバーは来場者へのアナウンスで「罰則付きの実効性のある条例でなければ意味がないのです。県民を守る条例でなければならないのです」と訴えた。(編集委員・阿部岳)