沖縄県宮古島市上野野原の陸上自衛隊駐屯地の用地取得を巡る贈収賄事件で、用地売却に便宜を図った見返りに現金600万円を受け取ったとして収賄罪に問われた前宮古島市長の下地敏彦被告(76)の判決公判が22日、那覇地裁であった。小野裕信裁判長は懲役3年、執行猶予5年、追徴600万円(求刑懲役3年、追徴金600万円)を言い渡し「市政の公正さや廉潔性に対する市民の期待や信頼を大きく裏切る犯行」と断じて、無罪主張を退けた。

 判決後、下地被告は本紙に「判決内容が不服で控訴を検討している」とコメント。配備地を決めたのは防衛省で「たとえ市長が反対しても国防上必要なら国は基地建設できる。市長の職務権限を拡大して考えるのは問題だ」とした。

 下地被告はこれまで、現金を受け取った事実は認めつつ「政治資金として渡された」と賄賂の認識などを否定し無罪を主張。弁護側は職務権限に陸自配備の受け入れ表明は含まれず、現金は受け入れ表明の対価でもないなどとしていた。

 小野裁判長は判決で、陸自配備は国防の在り方だけでなく「住民生活や地域の在り方に多大な影響を与える」と指摘。受け入れ表明に至った政治判断は「市長にしかなし得ない」として地方自治法上の市長権限に属し職務に該当すると判示した。

 千代田カントリークラブ(CC)所有地を国に売却できた元代表(65)=贈賄罪で有罪確定=が破産を免れ表明に感謝するのは当然で、現金を渡した際のお礼も「表明以外に感謝を伝える事情はうかがわれない」と対価性を指摘。下地被告が「賄賂性を基礎付ける事実経過の根幹を認識していた」などと賄賂性への故意も認められ、収賄罪は成立すると判断した。

 判決によると下地被告は2018年5月24日、受け入れ表明により千代田CCの所有地を売却できた見返りと知りながら元代表から都内で現金を受け取った。

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