[命ぐすい耳ぐすい 県医師会編](1273) 

 「頭頸部外科」という名称を目にされたことがありますか? 大学病院など比較的大きな病院では耳鼻科は耳鼻咽喉科・頭頸部外科と呼ばれていることが多いと思います。

 ここでいう「頭頸部」とは首から上の構造の総称です。顔面や口のなか、鼻の中を含めた、首よりも上の全て、またその中の構造物である、のど(咽頭、喉頭)、気管、食道上部も含んでいます。これら領域の病気では手術治療が中心になりますので、その担当分野が頭頸部外科と呼ばれています。

 首より上の臓器のうち脳は脳神経外科が、眼球は眼科が担当しますので、頭頸部外科は実際には脳、眼球を除いた頭頸部の良性・悪性腫瘍、外傷などに対する手術を行っています。頭頸部外科で最も重要なものは頭頸部がんの診療です。

 頭頸部がんは、脳と眼球を除いた首から上のすべての領域にできるがんを指します。頭頸部がんはさらに口腔がん(舌がんもこのなかに含まれます)、咽頭がん、喉頭がん、鼻・副鼻腔がん、唾液腺がん、および甲状腺がんに分けられています。その他に、耳や頭蓋底のがん、首の位置にある食道がん(頸部食がん)などもあります。これらはすべて耳鼻咽喉科・頭頸部外科の診療領域です。 

 頭頸部がんの治療で重要な事は機能(食事をする、呼吸をする、声を出す、聞くなど)を温存しながら、がんを治すことです。治療は手術が中心となり放射線治療や抗がん剤をうまく組み合わせていきます。

 治療後の生活のフォローアップも重要です。家庭の状況も考慮した、さまざまな面からのアプローチが必要です。歯科口腔外科医、理学療法士や言語聴覚士、管理栄養士、ソーシャルワーカーなどと多職種チームを形成して、互いに連携しあいながら治療が行われています。

 治療を終えて安堵(あんど)する一方、術後の痛みや、しゃべりにくい、食べにくいという不安の中にいる患者さんの心にも寄り添った、真の意味でのリハビリテーションもまた、頭頸部がん治療には欠かせません。(平川仁 琉球大学医学部耳鼻咽喉科=西原町)