[ウクライナ侵攻]

琉球弧に配備されている自衛隊

小西誠さん

野添文彬さん

琉球弧に配備されている自衛隊 小西誠さん 野添文彬さん

 ロシアのウクライナ侵攻を受け、外交の研究者や軍事ジャーナリストは沖縄周辺の安全保障環境への影響に注目している。ウクライナでの被害は基地に限らず民間施設にも及ぶ。専門家は日米と中国が台湾を巡り衝突すれば、沖縄の米軍や自衛隊の施設が攻撃対象になるとした上で、住民保護の議論や有事を強調したタカ派的な論調への警戒が必要だとしている。(社会部・銘苅一哲)

 与那国から奄美大島の島々では自衛隊が中国をにらみ、ミサイル部隊を中心に配備を強化している。軍事ジャーナリストの小西誠さんは近代の戦争はミサイルが中心となり、有事になれば島が標的になると指摘してきた。ウクライナ情勢を受け「やはり最大のポイントはミサイルによる攻撃と被害だ」と強調する。

■避難自治体任せ

 ロシアは主に地上からミサイルを発射し「誤差は20~30メートルで民間の住宅などを誤爆している」と指摘。台湾有事の場合、中国は地上発射型だけでなく、より精度の低い航空機や艦船によるミサイル攻撃を用いると予想し誤爆を懸念する。

 小西さんは「ウクライナは住民が避難する多くの地下シェルターがあるが、沖縄や石垣、宮古でそうした施設の整備は議論すらされていない」とし、日本国内では住民保護の役割を自治体に任せ、軍事施設の強化を続ける国の姿勢を問題視した。

 沖縄国際大の野添文彬准教授(日本外交史)は「米軍も基地の集中による脆弱(ぜいじゃく)性は自覚しているため、分散化を図っている」と指摘する。

 同時に「中国が台湾を侵攻する意図は捨てていないものの、その時期は遅くなったと指摘する専門家もいる」とも話す。(1)ロシアが侵攻で世界各国から批判を浴びている(2)ウクライナを見ると短期間でも領土侵攻は簡単ではない-ことなどを中国が学んだため、性急な台湾侵攻の可能性は高まっていないとする考えだ。

■改憲や核共有論

 野添准教授が注目するのは日本国内での安全保障を巡る議論の変化だ。「ウクライナ情勢と台湾有事を組み合わせ、憲法改正や米国との核共有、防衛力強化などタカ派的な論調が高まっている」と指摘し、ウクライナ侵攻を契機にした軍拡の議論を疑問視する。

 ウクライナで多く見られる情報戦も警戒。戦争では国民を分断する情報戦が始まる。歴史的背景から反戦感情が強く基地の集中する沖縄と本土の間にはすでに溝があるとして、「そこを利用されないためにも、正しく事実に基づいた情報を元にした議論と、沖縄の意見を尊重した日米の対応が重要だ」と強調した。