社説

社説[米、シリア攻撃]和平の展望を閉ざすな

2017年4月8日 12:19

 トランプ米政権がシリアのアサド政権に対する軍事攻撃に踏み切った。

 「独裁者のアサドが恐ろしい化学兵器を使って罪のない市民を殺した」

 「シリアとアサド政権に対する私の考え方は大きく変わった」

 トランプ大統領はそう断定し、アサド政権の存続を容認する姿勢を示していたこれまでの態度を一転させ、単独制裁にゴーサインを出した。

 反体制派が支配するシリア北西部イドリブ県で、サリンなどの化学兵器を使用したとみられる空爆があり、子どもら80人以上が死亡したことは世界に大きな衝撃を与えた。

 毒ガスなどの化学兵器の開発・製造・貯蔵・使用は化学兵器禁止条約によって禁じられている。化学兵器による空爆で市民を無差別に殺りくする行為は、国際法や人道に反する戦争犯罪である。

 オバマ前大統領は、化学兵器使用を「レッドライン(越えてはならない一線)」だと宣言したが、実際には軍事介入を見送った。

 今回の単独制裁は、オバマ氏との違いを際立たせ、「軍事介入も辞さない」との強い姿勢を内外に誇示した点に大きな意味がある。

 米国は、地中海の米海軍艦船からシリア軍の空軍基地向けに巡航ミサイル「トマホーク」59発を発射した。「これがトランプ政権だ」といわんばかりのメッセージを米中首脳会談のさなかに発したのだ。

 単独の軍事介入が、北朝鮮制裁に向け中国の積極的関与を促すメッセージであることは間違いないだろう。

■    ■

 「トランプの戦争」は、しかし、裏目に出る可能性のほうが高いのではないか。

 第1、シリア情勢の安定化につなげる道筋、展望がまったく示されていない。

 第2に、米国は、アサド政権が化学兵器を使用したと断定した以上、国際社会が納得するような明確な証拠を示さなければならないが、現時点ではまだ示されていない。

 このような形で米国による単独制裁が実行されるのは、イラク戦争の例からも分かるように、危険である。軍事介入につきまとうリスクを、外交経験のないトランプ氏はどう判断したのか。

 シリア政権軍やアサド政権の後ろ盾であるロシアは化学兵器使用を強く否定し、米国のミサイル攻撃を「侵略行為」だと強く非難している。今後、ロシアが反政府勢力への空爆を強める可能性もある。

 今後のシリア情勢は予測不可能だと言うべきなのかもしれない。

■    ■

 責められなければならないのは、国連安全保障理事会におけるロシアの非協力的態度である。シリア情勢に深く関与している大国として、ロシアは国連や化学兵器禁止機関(OPCW)による事実調査に積極的に協力すべきだ。

 シリア内戦による住民の犠牲と被害は「第2次世界大戦後最悪」だといわれる。化学兵器の使用が確認されたのも今回だけではない。なんの罪もない住民をこれ以上、大国の政治ゲームにさらしてはならない。シリアの「人道危機」を放置してはならない。    

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