3月の本部町議選で、「しまくとぅば遊説」を取り入れた新人の小橋川健さん(46)が初当選を果たした。選挙カーから妻の直美さん(47)が「まぎさるくいさーに、いっぺーぐぶりーなとーいびーん(大きい声で大変失礼しています)」などと語って大好評。小橋川さんは「50票はこれで取れたんじゃないか」と笑う。(北部報道部・阿部岳

しまくとぅば遊説の原稿を手にする(右から)小橋川直美さん、健さん、武内優紀さん=本部町健堅

小橋川さんの公約を訳した原稿

しまくとぅば遊説の原稿を手にする(右から)小橋川直美さん、健さん、武内優紀さん=本部町健堅 小橋川さんの公約を訳した原稿

 三日攻防が始まる木曜日の朝。遊説出発まであと5分という時に、後援会幹部がアナウンス担当の直美さんに紙を手渡した。小橋川さんの公約をしまくとぅばに直した原稿だった。

 「てぃちめや、きんきん区とぅむとぅぶ町ぬうみんちゅー、はるんちゅーまた繁盛むきてぃ頑張っていちゃびん(第一に、地元健堅区と本部町の漁師、農家のさらなる発展に向けて頑張っていきます)」

 勢いのある本部の言葉ではなく丁寧に響くように、中南部の言葉を使っていた。「ぶっつけ本番」だったが、直美さんは実はバスガイド。しまくとぅばならお客さんに紹介する機会も多く、すぐに対応できた。

 若い世代の多い中心部では控えめに、お年寄りが多そうな山間部では逆にどんどん使った。渡久地の町営市場の近くでも「町ぬかりゆしや、まちぐゎーぬしんかぬすなわいやいびん(町の発展は市場の皆さんがいてこそです)」といった具合。

 「公約はどうしても似てくる。言葉で変化がついて覚えてもらうのに良かったと思う」と直美さん。家からわざわざ出てくる人、農作業の手を休めて聞いてくれる人もいて、手応えを感じたという。

 直美さんの職場の後輩2人も同乗し、主に共通語でのアナウンスを担当した。しまくとぅば遊説に、國場五月さん(39)は「あまり話せない私たちの世代にとっては新鮮だった」。北海道出身の武内優紀さん(31)は「言葉の勉強になった」と話す。

 最終日は「最後のうにげーぐとぅなとーいびーん(最後のお願いです)」を連呼して締めくくった選挙戦。当選の夜は、「かりーさびら」でお祝いした。

 祖父母と暮らした時期が長く、40代では珍しく健堅くとぅばを使いこなす小橋川さんは「同じことを言っても、共通語にはない違う温かみがある。伝わり方が違う」と実感した。

 「今回好評だったから、4年後は候補者みんなが取り入れるかもしれない」と笑う。ライバルが増えて困るのでは、と聞くと「そうなったら素晴らしい。言葉はみんなで継承しないと」と答えた。