お疲れさまでした-。銀盤の女王の決断に、誰もが思わず口にしたのではないだろうか。フィギュアスケートの浅田真央さん(26)が競技生活に終止符を打つことを自身のブログで表明した

 ▼女子選手で初めてトリプルアクセルに成功した伊藤みどりさんに憧れ、幼いころから高みを目指し続けた。愛らしい笑顔と高い技術、演技力は多くのファンを魅了してきた。それだけに引退を惜しむ声も多い

 ▼「努力の人」だという。練習量も人一倍。自身に厳しく、黙々と練習に励みチャレンジする姿は、他の選手にも影響を与えた。練習をこなすことで自信を支えに試合に臨んだ

 ▼最愛の母親との別れもあった。氷上で涙を流したソチ冬季五輪フリーの演技は印象深い。その後休養期間を経て、昨季復帰したが、往年の力を取り戻せないまま、今回の引退となった

 ▼こだわってきた「強み」のジャンプに長年挑戦してこれたのは、達成感だけでなく挫折や葛藤を重ねてきたからこそだろう。悲しみを抱えながらも難技に挑む姿は見るものの心をとらえ、フィギュア界の魅力も広めてくれた

 ▼「フィギュア人生に悔いはない」。選手を続ける自信と気力を失ったとしながらも、こう言い切れるのはまさに「努力」のゆえんだろう。リンクを下りても、新たな夢に向けた努力をみせてくれるはずだ。(赤嶺由紀子)