「長生きしたいですよね」。先週末に受診した人間ドックで、担当医師から検査結果を基に不摂生な生活を厳しく指摘された
▼体重増とレッドゾーンに入った中性脂肪の数値。人並みに食事には気を遣い、ウオーキングなど適度な運動はしてるつもりですと釈明したが、「数字はうそつきませんから」
▼こちらの数字は疑いありということなのだろう。経営再建中の東芝が2度延期した2016年4~12月期連結決算を発表した。3度目の延期を避けるため、監査法人の「適正」との意見表明をもらえない中での異例の開示である
▼企業にとって監査は、いわば「人間ドック」である。医師役である監査法人に決算数字を診察してもらい、「偽りなし」というお墨付きを得るのが上場企業のルールである。それがないまま、自ら健康宣言しても市場の信用は得られまい
▼東芝は既に15年に発覚した不正会計問題で東京証券取引所の審査対象となった前科がある。さらに今回の事態によって決算の信頼性は大きく揺らぎ、上場廃止の危険性が一層高まった
▼17年3月期決算の発表や米原発事業などによる巨額損失の穴埋めをする半導体事業の売却交渉が待ったなしである。冒頭の医師の問いかけに首を縦に振るなら、痛みを覚悟し、自らの体にメスを入れて体質改善の道を探る以外にない。(稲嶺幸弘)