北朝鮮が発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)が、日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下した。

 北海道・渡島半島から約150キロの近さで、日本漁船も操業する漁場だ。

 国連安全保障理事会決議に違反する上、住民の生命をも脅かす。地域の緊張を高める危険な挑発はやめるべきだ。

 日本政府によると、発射されたミサイルは通常軌道なら1万5千キロ以上飛行でき、米国全土を射程に収める能力がある。岸信夫防衛相は会見で「これまでの発射とは次元の異なる脅威」と表現した。

 北朝鮮国営メディアは、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記が発射を指導し、「米帝国主義との長期的対決に徹底して準備していく」と述べたと報じた。

 朝鮮半島の緊張を高め、米国を交渉の場に引きずり出す狙いがあるとみられる。

 米バイデン政権は対話路線による段階的な非核化を掲げているが、これまで目立った進展がない。

 手詰まり状態の中、北朝鮮は核開発の進捗(しんちょく)を印象づけることで核保有国としての体制維持を図る構えなのだろう。

 トランプ前大統領時代に表明した、核実験とICBM試射の一時停止(モラトリアム)措置をほごにした形だ。

 ロシアのウクライナ侵攻を巡って、北大西洋条約機構(NATO)会議、先進7カ国首脳会合が開催されたタイミングであり、バイデン大統領や西側諸国に揺さぶりを掛ける狙いもあっただろう。

 国連安保理は日本時間の26日、緊急の公開会合を開く。日本は国際社会と連携して対策を講じるべきだ。

■    ■

 北朝鮮の挑発行為の背景にはウクライナ情勢がある。

 核を持たないウクライナがロシアに侵攻されたことで、金総書記は、核の有効性を実感したのではないか。

 国連安保理がロシアの拒否権行使によって機能不全に陥っていることに乗じた行為にもみえる。

 北朝鮮は、国連総会の対ロシア非難決議で反対に票を投じるなど、親ロの姿勢を明確にしている。

 ロシアのプーチン大統領は核兵器使用の可能性をほのめかし、威嚇を繰り返している。冷戦時代に逆戻りする行為で、東アジアの平和と安定に水を差し、核を巡る国際条約をなし崩しにするものだ。

 北朝鮮はこうしたロシアに同調し、核の抑止力を盾に、対米交渉力を高める戦略に打って出たのだろう。

■    ■

 ロシアのウクライナ侵攻以降、米国の核兵器を日本国内に配備して共同運用する「核共有」が取り沙汰されている。

 「核共有」の議論を進めながら、北朝鮮の核開発を批判できるのか。

 唯一の戦争被爆国である日本が取るべき行動は、改めて国際社会に核被害の恐ろしさを訴え、非核化を呼び掛けることである。

 武力で問題解決を図ろうとすれば悲劇を広げるだけだということを私たちはウクライナで目の当たりにしている。外交努力によって、核によらない安全保障の仕組みを模索するべきだ。