外相や沖縄担当大使は、米軍の代弁者なのか。

 厚木基地(神奈川県)所属の米海軍ヘリの名護湾でつり下げ訓練を巡って、橋本尚文沖縄大使は28日、社民党県連の抗議に対し「個々の活動目的によっては施設区域外で(訓練を)行うこともあり得る」と述べた。一般論としつつ、提供施設・区域外での米軍訓練を認めた形だ。

 林芳正外相はその翌日の記者会見で「日米安保条約の目的達成のため、実弾射撃訓練等を伴わない米軍機の訓練については、施設・区域の外で行うことは認められる」と述べ、容認の姿勢を明確にしている。

 恐怖を感じ抗議の声を上げる県民との落差には、あぜんとするほかない。

 民間人が通常立ち入りできない提供施設・区域内と異なり、住民が往来し日常的に経済活動を行う区域外での訓練は格段に危険性が増す。沖縄中どこでも米軍が訓練するのを認めたのに等しい両氏の発言は事実上、その危険をも容認したのだ。

 1965年には、読谷村でパラシュート投下された米軍トレーラーが民家そばに落下、小学生が死亡する事故が起きた。つり下げ訓練の実施は、その悲惨な記憶とも密接に結びついている。

 名護市議会は全会一致の抗議決議の中で、現場は刺し網漁の網が設置されている場所でもあると指摘。「民間人の安全を確保するための仕組みを無視して訓練をしたことは、大変遺憾だ」と批判した。地元として当然の懸念である。「容認」発言は政府の役割放棄に他ならない。

■    ■

 在沖米軍のルール違反訓練が目に余る。

 2020年以降、嘉手納基地所属の特殊作戦機MC130による低空飛行が提供区域外の慶良間諸島や国頭村の辺戸岬などで相次いだ。

 那覇港湾施設(那覇軍港)では、米海兵隊がオスプレイなどの航空機を使い非戦闘員の退避訓練を実施。那覇軍港を提供する主目的を「港湾施設及び貯油所」とする「5・15メモ」を逸脱するものだ。

 日本政府もかつては日米地位協定上、根拠がはっきりしない区域外訓練の拡大を懸念していた。1979年の答弁書では、区域外訓練を「協定上予想しない」とはっきり否定していた。

 なぜ明確な根拠なく姿勢を変えるのか。透けて見えるのは、日本政府の対米従属姿勢であり、現状追認という「沖縄差別」である。

■    ■

 新型コロナウイルスを巡って、日本への出発前と到着後に米兵らがPCR検査を受けなかったことがその後の感染拡大の要因とされるなど、軍事行動以外の面でも米軍の行動は負担軽減と逆行している。

 沖縄を占領中、米軍は自由に基地を造り、思うままに行動してきた。

 復帰から50年を経ても、基地問題は解決されず、名護市辺野古では新基地の一方的な建設工事が進む。人命軽視のつり下げ訓練は到底容認できるものではない。米軍側に軸足を置く政府の姿勢が問われている。