頭蓋骨の形状から顔立ちを復元する「復顔法」など、全国的にも珍しい技術を確立した“似顔絵捜査のスペシャリスト”が定年を迎えた。県警鑑識課の安里秀明警部(60)は30年以上の警察官人生で3千枚以上の似顔絵を作成し、殺人事件を含む100件以上を解決に導いた。似顔絵では全国で2人しか認められていない、警察庁指定広域技能指導官でもある。後進に向け「デジタル時代になっても、紙と鉛筆は事件捜査には欠かせない」と力を込める。(社会部・豊島鉄博)

安里さんが描いた、1990年の殺人事件で全国指名手配中の容疑者の現在のイメージ(左上、県警ホームページから)

県警で長年、似顔絵捜査の後進育成に努めてきた鑑識課の安里秀明さん。手前は取材した記者の似顔絵=25日、県警本部

安里さんが描いた、1990年の殺人事件で全国指名手配中の容疑者の現在のイメージ(左上、県警ホームページから) 県警で長年、似顔絵捜査の後進育成に努めてきた鑑識課の安里秀明さん。手前は取材した記者の似顔絵=25日、県警本部

 安里さんは1985年の採用。美術同好会に所属していた高校2年時、彫刻作品が沖展で入選した腕前だ。美術教師を目指したが志望の芸大に受からず、刑事ドラマの影響で警察官を志した。

 初任地の名護署で、技能はすぐ上司の目に留まった。実況見分や変死体の発見時、カメラのフィルムが切れた際に手書きで状況を描写。絵のうまさを認められて87年、似顔絵講習会に参加して以来、約3600枚の似顔絵を作成してきた。

 特に印象に残るのは2000年、波照間島で発生した殺人事件。八重山署に勤務していた安里さんは目撃者からの聞き取りを基に似顔絵を作成。石垣港で犯人を見つけ、自ら逮捕した。

 目撃者や被害者は責任を抱えていたり、恐怖で心をふさいでいたりする人も多い。「相手の心をほぐし、いかに安心して話してもらえるかが何より重要」と説く。

 コロナ禍のいま、ほとんどの人がマスク姿だ。そんな状況下で捜査に役立つのが似顔絵という。「防犯カメラで顔がぼんやりとしか映っていなくても、目元が分かれば、見えないパーツも描ける」。目撃者への聞き取りが欠かせないのは、そのためだ。

 新年度から再任用となり、後進の指導に当たる。

 似顔絵作成はタブレットやタッチペンなど、デジタル化が進むと予測する。それでも「絵を描く技術は紙と鉛筆でしか学べない。基礎技術をさらに発展させ、事件解決という結果につなげてほしい」。若い後継者にエールを送った。