公開中の米映画「キングコング 髑髏島(どくろとう)の巨神」を見た。迫力の怪獣バトルを楽しんだが、いつ襲われるか分からないままジャングルを進む米兵の姿はベトナム戦争そのものだった

▼設定は1973年、米軍のベトナム撤退で本国に戻ろうとするヘリ部隊に、地図にない島の調査が命じられる。空から次々と爆弾を落として島の守護神コングの怒りを買い、全機たたき落とされた

▼米国のベトナム敗北を認めたくない大佐は目前で部下をコングに殺され、正気を失う。生き残った部下の命を顧みず、無謀な戦いをやめない。そもそも米軍が島に侵入しなければ、怪獣は暴れなかったのに

▼米国がシリア、アフガニスタンを爆撃すれば、北朝鮮は「恐れない」とばかりにミサイルを発射する。外交とは呼べない力の誇示合戦が、国際情勢を緊迫化させている

▼沖縄攻撃を想定した米空軍は12日、嘉手納基地の滑走路に戦闘機を陳列。参謀総長はツイッターに「この素晴らしい戦闘能力を見よ」と書き込んだが、怪獣より現実の人間の恐ろしさを痛感した

▼映画の中で末端兵士は「ベトナムで全滅させた村の生き残りは、俺たちが現れるまで銃を見たことがないと言っていた」と心の傷を吐露する。大佐とコング討伐に向かう際、こうつぶやく。「こっちで仕立てなきゃ、敵なんて存在しないのかも」(磯野直)