ロシアによるウクライナ侵攻で台湾有事の懸念も強まり、地理的に近い沖縄の軍事拠点としての重要性が高まっている状況だ。その場合、広大な米軍基地や自衛隊基地を抱える沖縄は攻撃対象になりかねず、専門家は米中衝突などで紛争に巻き込まれる危険は高いとの見方を示す。(東京報道部・嘉良謙太朗)

広大な米軍基地を抱える沖縄

(資料写真)日米共同訓練で、米海兵隊のオスプレイ着陸を援護するため、銃を構えて警戒する水陸機動団の隊員

広大な米軍基地を抱える沖縄 (資料写真)日米共同訓練で、米海兵隊のオスプレイ着陸を援護するため、銃を構えて警戒する水陸機動団の隊員

 「台湾侵略が起きれば米軍が出動し、自衛隊も米軍を防護する。日本がある程度巻き込まれることにならざるを得ない」。河野太郎元防衛相は4日、国会内での講演で、台湾有事に対する自身の見解を示した。

 中国の習近平国家主席は台湾統一を「歴史的任務」と位置付け、武力行使も辞さない構えだ。与那国島と台湾は約110キロしか離れておらず「台湾有事は日本有事」(安倍晋三元首相)といった政治家の言動も盛んになっている。

■軍事活動が活発化

 対立の先鋭化を背景に、沖縄周辺では米中双方の軍事活動が活発化する傾向がうかがえる。

 尖閣諸島周辺では中国海警局船の航行が常態化し、中国海軍の艦艇が沖縄本島と宮古島の間の海域を通過する姿も確認されている。中国軍機が台湾の防空識別圏に入るのも相次ぐ。

 対する米軍は2月、1万人以上が活動する大規模訓練「ノーブル・フュージョン」を沖縄周辺で実施し、海洋進出を強める中国をけん制。同時期に陸海空3自衛隊とそれぞれ日米共同訓練を重ね、日米のプレゼンス(存在感)を誇示した。

 陸自トップの吉田圭秀陸上幕僚長は「数よりも質的な向上が大きい」と指摘。日米が危機感を共有しながら共同訓練の在り方を議論していく考えを示す。

 台湾有事について、防衛省防衛研究所米欧ロシア研究室長の飯田将史氏は「中国が大規模な軍事行動を取ればとるほど、日本や周辺諸国に影響を及ぼす。中国が本気で台湾占領に挑めば巻き込まれるのは間違いない」と指摘する。

■事前協議の対象

 だが、第2次世界大戦で住民を巻き込む激しい戦闘を経験した沖縄では、再び戦場となることへの懸念は根強い。3月24日の参院外交防衛委員会では、伊波洋一氏(無所属)が「目の前にあるのは台湾有事という名の南西諸島の軍事戦場化。そこに基地を造る責任が今問われている」と、政府が進める南西諸島の軍備強化を批判した。

 また米軍が日本の基地から出撃する場合は日米安保条約の事前協議の対象となる。元内閣官房副長官補の柳澤協二氏は3月、国会内で開かれた台湾有事を考えるシンポジウムで「日本が(出撃を)ダメだと言えば日米同盟は崩壊する。了承すれば米国の戦争に巻き込まれていく。そういう状況を本気で考えなければいけない」と警鐘を鳴らした。

■鍵を握る中国の軍事行動

飯田将史氏・防衛研究所米欧ロシア研究室長

 ウクライナ侵攻が台湾有事に与える影響は、ウクライナ情勢がどう帰結するかにかかっている。もしプーチン政権が維持され、ウクライナにおける影響力を拡大・維持できるような状況になった場合、習近平政権が台湾で動いたときに成功する可能性が見えてくる。台湾に対する軍事的圧力、最悪の場合は軍事侵攻を促す要因になりかねない。

 台湾有事で日本が巻き込まれる可能性は、中国がどの程度の軍事行動を取るかで変わってくる。台湾有事と言ってもさまざまな事態が想定されるが、中国が大規模な軍事行動を取ればとるほど、日本や周辺諸国に影響を及ぼすという比例関係がある。中国が本気で台湾占領に挑めば巻き込まれるのは間違いない。

 日本は最終的に国益がどこにあるのかを考えないといけない。軍事力を用いた台湾攻撃は、地域の安全保障や秩序を破壊する行為。その後の日本の安全を考えたときに、看過していいのかという問題がある。米国が関与したにもかかわらず、台湾が武力で中国に併合されれば、米国のクレディビリティ(信頼性)が大きく損なわれ、日本の安全保障にとっても大きな損失になる。

 外交力を発揮すべきだというのは正しいが、軍事力の背景がないと効かない。抑止力とは、もし日本に軍事行動をとったとき、相手が許容できないだけの環境をつくることができるかだ。日本が防衛力を高めたからといって緊張が高まるわけではなく、緊張が高まるかどうかはひとえに現状の変更を目指す中国の行動にかかっている。

 一方で防衛力強化と基地負担のバランスは難しい。地元負担もあり、なぜ南西諸島の防衛力を強化しなければいけないのかを政府は丁寧に説明する必要があるのではないか。