名護市辺野古の新基地建設を巡り、国土交通相は、防衛省による埋め立ての設計変更申請を不承認とした県の処分を取り消した。さらに県に対し、設計変更を今月20日までに承認するよう勧告した。

 斉藤鉄夫国交相は裁決で「(県の判断は)裁量権の範囲を逸脱し、または乱用したもので違法であり不当」と結論付けた。

 全面的に防衛省側の主張を認めた形で、県民からは、期限を切って承認を迫ったことに「ほとんど脅迫だ」と反発の声が上がっている。

 埋め立ての設計変更を巡って県は、承認の根拠となる公有水面埋立法の要件に適合していないと判断し、昨年11月、設計変更申請を不承認とした。

 マヨネーズ並みといわれる軟弱地盤の調査が不足し、地盤の安定性が十分検討されていないことなどを理由に挙げた。

 防衛省は県の不承認を「行政権の著しい乱用」と批判。行政不服審査法に基づき、県の処分取り消しを求めていた。

 行政不服審査請求は、行政庁の違法、不当な処分に不服を申し立てる制度である。「私人」の権利救済を目的とするものだ。

 国の行政機関が私人に成り済まし、異議を申し立てることは、専門家から「法の乱用」と指摘されている。

 今回、同じ国の行政機関である防衛省と国交省が審査請求人と執行停止申立人になった。防衛相と国交相は同じ岸田文雄内閣のメンバーである。

 いわば結論ありきの、身内による裁決だ。公平性、客観性を疑わせるものだ。

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 辺野古を巡っては2018年に故翁長雄志知事が埋め立て承認を撤回。国交相が県の撤回を取り消す裁決をした。

 そもそもの発端である1996年の日米合意は、普天間飛行場の「5~7年以内の全面返還」だった。

 その時点で辺野古移設に合意したわけではない。海を埋め立てて滑走路を配置する新基地構想は後になって決まったものだ。

 当時の安倍晋三首相が約束した普天間飛行場の5年以内運用停止はほごにされた。

 軟弱地盤改良工事によって、辺野古新基地が運用できるまでは、知事の承認を得てから少なくとも12年かかる。

 辺野古への新基地建設は、普天間飛行場の一日も早い危険性の除去という政策目的を実現できないプロジェクトになっているのである。

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 県が勧告に応じず承認しなければ、国交省は、是正の指示を出す可能性がある。

 これに対し県は、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」への審査申し出や抗告訴訟で対抗するとみられる。

 ただ同様の基地を巡る裁判闘争で県が勝訴した例はなく、いばらの道だ。

 国にどう対抗するのか、県民に丁寧に説明しながら、理解を得る必要がある。

 新基地建設費は1兆円近くに膨れ上がる。妥当な政策なのか。国民全体の議論にしなければならない。