4月10日は「きょうだいの日」。病気や障がいのある子の兄弟や姉妹への理解を広げようと、2019年にそんな記念日が制定された。健常な故に親に甘えられず、寂しさや自己否定の感情を募らせてしまいがちなきょうだいたち。県内で支援活動に取り組む「きょうだいの会 わたぼうし」代表の石垣春美さん(64)は、「多くの子は介護や世話を担うヤングケアラー。人知れず抱えた心の痛みに寄り添える社会になれば」と願う。(社会部・鈴木実)
■伝えたい「あなたは大切な存在」
障がい児や病児の兄弟姉妹は「きょうだい児」や「きょうだい」と呼ばれ、支援の必要性が指摘されてきた。親に負担をかけないよう「いい子」を演じ過ぎてしまったり、逆に反発して家族に溝が生まれたり。ヤングケアラーの存在が知られるにつれ、「きょうだいケアラー」との言葉も使われ始めた。
「親や祖父母の世話ならゴールが見えるが、きょうだいの世話は一生続く。ヤングケアラーの中でも、きょうだい児特有の悩み」。自身も脳性まひの兄がいる石垣さんは指摘する。
石垣さんは数年前、あるきょうだい児の母親からの相談に胸を痛めた。
4歳の息子から『僕はマーマの子どもじゃない方がいいんだよね?』と言われてしまったこと。上の子の介護に忙しくて、その子にいっぱい甘えさせてやれず悔やんでいること-。
「きょうだい児の中には自傷行為に走ったり、責任感のあまり心を病んだりするケースもある。そんな子に、あなた自身がかけがえのない大切な存在だと伝えたい」
■「世話して偉いね」から一歩先に
石垣さんが子ども時代のつらさを話せるようになったのは、母親が亡くなってから。それまでは家族を傷つけたくなくて、胸にしまい込んできた。
「支援が必要なことに本人が気付いていないこともあり、外からは見えにくい。学校の家庭訪問や地域の見守りといった機能も弱まっている」と憂慮する。
石垣さんらが中心となって、わたぼうしを発足したのは2020年。今夏にはきょうだい児の交流会や親向けの研修、当事者の情報交換会を予定している。
「これまでは『きょうだいの世話をして偉いね』で終わっていた。そこから一歩踏み出す時代に来ているのでは」と社会に問いかける。
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わたぼうしの連絡先は、電話098(856)2115(障害者就労支援センターちいろば)。